バラエティ進出を機に明るい人柄に注目が集まるDJ KOOさん(61)。音楽業界のレジェンドは「エンタメは生きる力」を信条に、活躍の場を広げ続けます。(全4回中の1回)

90年代音楽業界の中心から見ていた景色

── TRFは、90年代の音楽シーンの象徴ともいえる存在でした。ご自身にとってどんな時代でしたか?

 

DJ KOOさん:小室哲哉さんのそばで、音楽シーンに竜巻が起こる瞬間をゼロから見ることができ、貴重な体験でした。小室さんのつくる音楽が日本中に竜巻を起こし、僕らもTRFとしてその真ん中に立たせてもらった。

 

周りをみれば、ドリカムさんやシャ乱Qさん、チャゲアスさんやミスチルさんなどがいて。素晴らしい音楽が次々と業界を席巻するなか、ヒットチャートのトップ争いを繰り広げてきたのはいい思い出です。

 

ワイルドな表情でスーツを着こなす90年代当時のKOOさん

初めてTRFでツアーをしたのは93年です。『BOY MEETS GIRL』で幕が上がった瞬間、お客さんから大歓声があがったときは本当に感動した。自分たちの音楽をこんなにもたくさんの人たちが待っていてくれたんだって。あれから30年経つけれど、今でも忘れられません。

52歳でバラエティに進出

── 52歳のときにバラエティ番組に進出され、タレントとしても大活躍されています。それまで音楽シーンのレジェンドというイメージだったKOOさんですが、あまりの天然っぷりやお茶目なキャラクターで、あっという間にバラエティの人気者に。ただ、当初ご自身としては、抵抗があったとか。

 

DJ KOOさん:「自分はアーティストだから」とどこかカッコつけていたんですね。でも、カッコつけてはぐらかしたりすることが、逆にカッコ悪いんだと気づきました。バラエティの現場では、見る人にいかに楽しんでもらえるかを考えながら、みんなが一丸となって取り組んでいて、チームワークの素晴らしさや大切さを学びました。僕も皆さんを信じて思いきって身をゆだねたことが、今のスタイルに繋がっています。

 

ド派手な衣装が定番!バラエティでも大活躍

── もちろんバラエティだけではなく音楽のお仕事にも精力的に取り組まれています。

 

DJ KOOさん:おかげさまで、いろいろなジャンルの方とコラボをさせていただいています。なかでも2017年からやっているお祭りと盆踊りのコラボの「DJ盆踊り」は、毎回すごく盛り上がるんです。昨年やったときは、年配の方やお母さん、お父さんも子どもを抱っこしながら、キラキラとした目で本当に嬉しそうに踊っていました。

 

この数年、コロナ禍でずっと閉塞感がありましたが、やっぱり楽しむことは、生きる上ですごく大きな力になるんだなと、エンターテインメントの底力を実感しましたね。

 

「エンタメは生きる力」DJ盆踊りでお客さんと一体に

── どんどんお仕事の幅が広がっている印象です。21年からは、大阪芸術大学の客員教授としても活動されています。

 

DJ KOOさん:限られた時間のなかで、学生の皆さんにいかに音楽の魅力を伝えていくか。それを実感してもらうためにはどうすればいいか。毎回、頭を悩ませますね。音楽の知識は自分でも学べると思うので、僕が教えることにどう価値を持たせられるかだと思っています。

 

ただ、この年齢になって何より刺激になるのは、若い世代との交流です。彼らのふとした質問から、今まで自分が当たり前にやっていたことを見つめ直すきっかけができたり、新たな発想を得ることも多いんです。新しいことに取り組む意欲や一歩踏み出す勇気さえ失わなければ、いくつになっても人はアップデートしていけるんだなと実感しています。

 

── 教えながら自分も学んでいるという感じなのですね。

 

DJ KOOさん:まさに、「教えることは教わること」だと気づかされます。

 

今、エイベックスで、中高生に出張授業を行う「avex class」を実施しているのですが、僕も中学校と高校で特別授業を行いました。高校では、コロナで学校行事ができなかったから最後に何かみんなで楽しい事をやりたいという学生さんからの要望を受けて、体育館にDJブースを持ち込んで、みんなで踊ってもらいました。いい思い出になっているといいなあ。

 

若い人たちには、「一歩踏み込む力や夢を実現させる気持ちを持つことで、人生が楽しくなるんだよ」というメッセージを送っています。若い世代のクリエイティブに刺激を与え、何かしら発想のヒントになれば嬉しいですね。

 

大阪芸術大学での講義風景

僕たちTRFはそれぞれのスペシャリスト

── 今年、TRFはデビュー30周年を迎えました。5人のメンバーが誰ひとり抜けることなく30年間続けてこられたのはすごいことですよね。継続の秘訣はなんでしょうか?

 

DJ KOOさん:もともと僕たちは、ボーカル、ダンサー、DJとそれぞれ違う分野のスペシャリストが集まってできたグループです。途中、活動を休止していた時期もありますが、それでもここまで続けてこられたのは、メンバー一人ひとりが、自分の「すべきこと」にまっすぐ取り組み、突き詰めることをやめなかったからだと思うんです。

 

── それぞれが「すべきこと」を突き詰め、心地よい緊張感を保ち続ける。アベンジャーズ感がありますね。

 

DJ KOOさん:やはり30年間の蓄積があるので、ステージ上でのパフォーマンスやお客さんとの一体感は、「この5人じゃないとつくれないな」という感じはあります。誰が抜けてもダメで5人そろった状態がベスト。全員そうした思いを根底に持っています。

 

だからこそ、「ここで自分が衰えるわけにはいかない」というプライドがあるし、努力し続けるんだと思うんです。メンバーは、いい意味でライバル。もともとアンダーグラウンド出身なので、そこで培ったハングリー精神は、今も持ち続けていますね。

 

ただ、30周年ライブをやった時に、「今だからできるよね」ということもありました。

 

── というのは…?

 

DJ KOOさん:当時のアグレッシブなスタイルだけでなく、少し肩の力を抜いて、みんながリラックスして楽しめるような場面もつくりたいねと。

 

それは実際に僕たちが歳を重ねたからこそできることだし、年代にあった頑張りをみせていくことも大事。お客さんにもそのリアルを感じてもらえればと思っています。

 

僕やSAMは60歳を超えていますが、それでもDJやダンサーとして頑張る姿だったり、大切にしているマインドといった本質的なものを感じ取ってもらえれば嬉しいですね。

 

PROFILE DJ KOOさん 

1961年生まれ、東京都出身。ダンス&ボーカルグループTRFのDJ、リーダー。ソロとしては、“触れ合う人々をエネルギッシュに!元気に!笑顔に!”をモットーに幅広い音楽をDJスタイルでプレイし、共感、賛同を得ている。バラエティー番組にも多数出演。幅広い層のファンを獲得している。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/DJ KOO