演歌歌手として活躍の幅を広げている丘みどりさん。1歳の愛娘への子守唄は鳥羽一郎さんの「兄弟船」だと話す丘さんに、子育てについて伺いました。(全3回中の2回)

母になって仕事をより真剣に

── 娘さんとの生活はいかがですか。

 

丘さん:1歳7か月になって、新しいことが毎日できるようになる時期で、だんだん意思疎通ができるようになってきたのが嬉しいですね。私が言ったことに対して「うんうん」とか「いや」という意思を示してくれるようになりました。

 

丘みどりさん
1歳の娘さんを抱っこしながら優しいママの表情を見せる丘さん

でも、もうイヤイヤ期なのかなと思うこともあって。時間と手間をかけて作ったご飯に限って「ナイ」と言われると心折れますね。「え〜、頑張って作ったのに!」って。案外、時間がないときに適当に作ったもののほうがパクパク食べるんですよね。

 

── すごくわかります(笑)。インスタグラムにも美味しそうなお弁当の投稿をされていますが、料理はお好きですか。

 

丘さん:子どもを産む前は、料理中にはその作業だけに集中できるので気分転換になっていたんですけど、今は娘に絡まれるのでリフレッシュはできなくなりましたね。でもお料理をするのは変わらず好きです。

 

インスタグラムに投稿している丘さんの手作り弁当「丘弁」。彩りもよく美味しそう!

── 娘さんも歌が好きだとか。

 

丘さん:特に鳥羽一郎さんが好きです。小さいときから子守唄で兄弟船を歌っていたので、鳥羽さんがテレビに出るとわ〜っと駆け寄っていきますし、自然と演歌を聴いているので馴染みがあるんだと思います。

 

そんなに大きな声は出せないのですが家でも練習しているので、コンサート前の最初のお客さんが娘ですね。私が歌うとちゃんと椅子に座って聞いて、終わったら拍手もしてくれます。

 

── かわいい!小さなお客さんですね。

 

丘さん:最近、着物を着て接客をしてくださる店にご飯を食べに行くと、お店の方を見て「ママ!ママ!」って言うんです。「違うよ!」と言うんですけど、着物=ママという認識があるみたいで(笑)。

 

── 着物を着る機会が多いですもんね。

 

丘さん:今は慣れましたけど、昔まだ着付けの方がついてくださらないときはマネージャーさんと一緒に着付けをして。「絶対こんな帯じゃない〜!」とか言いながらてんやわんや。いちからでしたけど、毎日着続けていたらそれがすっかりユニフォームとして定着しました。着物は、普段なかなか着る機会がない方が多いなか、仕事で綺麗に着せていただけるのは本当にありがたいと思っています。

 

── 仕事中はご家族が娘さんの面倒を見ているんですか。

 

丘さん:夫や、夫のお母さん、それにシッターさんに見てもらっています。地方に行くときに限って朝から熱が!なんてときもあります。自分が母親になってみて、自分の好きなお仕事が毎日できることが当たり前じゃないと思うようになって、より一つひとつのお仕事に真剣に向き合うようになりました。

 

丘さんと娘さんのお出かけショット。娘さんの花柄のお洋服が可愛い!

── 家を出る際にうしろ髪を引かれることはありますか。

 

丘さん:ありますね。赤ちゃんの頃はあまりわからなかったけれど、今は私が出かける準備をしていると、「ママ〜、いやだいやだ」って言ってくるんです。「ううっ」と思いながら玄関を出ます。

 

でも、いざ家を出たあとはしっかり「丘みどり」として頑張らないと、待っている娘にも悪いので気持ちを切り替えて頑張っています。

亡き母との思い出

── 娘さんの将来に願うことはなんでしょう。

 

丘さん:自分の一番好きなことをしてほしいと思います。私は小さい頃から歌が大好きで、ずっと歌っていたんです。こうして歌手になれたというのは本当に幸せなことで。好きなことを見つけられるようにするのが親の役割かなと思うんです。なんでもいいので一番好きなことをできるようにさせてあげたいなと思います。

 

私自身はいろんな習い事をさせてもらったなかで唯一続けてこられたのが歌でした。5歳から始めた民謡だけは、「1回決めたら、辞めるのは絶対ダメ」と母から言われていたんです。高校卒業まで続けました。

 

丘みどりさん
ステージで堂々としたパフォーマンスを披露する丘さん

── なかなか続けられるものではありません。

 

丘さん:「辞めたい」というと母は、「やるって言ったよね」って。お休みの日に発表会やコンクールがあって、みんなが遊んでいるときまで行きたくないと何度も思いました。でも一度決めたことは最後までやり通すというのは母から教わったことです。

 

── 才能を見越してのことでしょうか。

 

丘さん:いえ、私はものすごくうまかったわけでもないので、才能というよりも母は「自分で決めたことを貫く大切さ」を教えたかったんだと思います。結果、続けたことで今よかったと思えているので、母には感謝しています。

 

丘みどりさん
優しくほほえむお母さんと弟と

── ご自身が母親になってみて、思い出すお母さんの言葉はありますか。

 

丘さん:一番覚えているのは、みんなと同じことをしないほうが褒められていたことですね。

 

人と同じこともひと通りするんですけど、それに加えて違うこともしたら褒められて。母に褒めてもらいたくて何か別のこともしてみようとずっと思っていました。民謡も周りに習っている子はいなかったんです。

 

── お母さんはどのような思いだったのでしょうか。

 

丘さん:母は目立ったこともしないし、人と足並みを揃えて生きてきたタイプの人だったので「私みたいになってほしくない」とずっと言っていました。母のことは大好きだったので「なんでママみたいになっちゃダメなんだろう」と小さい頃は思っていたのですが、今になってわかることもあります。人と違っていてもいいし、どんな自分も受け入れていくという意味だったのかなと。私も娘に教えてあげたいと思いますね。

 

PROFILE 丘みどりさん

丘みどりさん

1984年生まれ。幼少より民謡をはじめ、18歳でアイドルとして芸能界入り、20歳で演歌歌手デビュー。NHK紅白歌合戦への出場ほか、CM、バラエティ番組、コンサートツアー等幅広く活躍。新曲『椿姫咲いた』発売中。

取材・文/内橋明日香 写真提供/丘みどり