小学校教員のネコ先生(@nekosensei0519)が同じ特性がある2人の児童との関わりから感じたこと──。その体験談を漫画にした「とある星の生き物の話(Same name, different heart.)」をTwitterに投稿したところ、多くの関心が寄せられました。

 

漫画「とある星の生き物の話(Same name, different heart.)」P1
漫画「とある星の生き物の話(Same name, different heart.)」P1

「2匹が同じようで違うこと」に考えさせられた

漫画「とある星の生き物の話(Same name, different heart.)」は、走ることが上手な子たちのなかに、みんなとは違う2匹がいたというフレーズから始まります。2匹の足には水かきがついていてみんなと同じように走れません。そんな2匹ですが2匹の思いはまったく違うものでした。

 

1匹は走ることへの執着がなく、陸よりも海でうまく動けることに気づき自分の居場所を見つけます。もう1匹は「僕はみんなと同じように走りたいんだ」と、走ることへの思いがほかの子と同じようにありました。周りは「あなたには、陸よりあっちがあってるよ」「あなたは、ほかの人にはできないことができるんだよ」と声を掛けますが、もう1匹の心には響きませんでした──。

 

「いっけん、同じ特徴の2匹でも心の有りようはそれぞれ違っている」ということをとてもかわいらしいイラストと優しい視点でわかりやすく描いています。この漫画に8万いいねと多くのコメントがつくなど、多くの反響が寄せられました。

 

この漫画を読んだフォロワーさんたちからは「いい話ですね。同じに見えても、同じ考えじゃないって事を、改めて考えさせられました。教えてくれてありがとう」「みんなと違うことを誇れる人もいるし,そう思えない人もいる。誰に対しても寄り添いたい」などのコメントが寄せられました。なかには、童話を例に挙げたコメントも。

 

「『みにくいアヒルの子』もラストでむしろ優雅な鳥で良かった。ではなく、あくまで生まれ育ったアヒル界で一緒に生きられる生活が欲しかったのではないのかと。その子に聞いてみないとその子が望むものはわからない」

現場での体験をもとにネコ先生が伝えたかったこと

「最近はインターネットも普及し、ASD(自閉症スペクトラム症)とかADHD(注意欠如・多動症)などの診断名の特性をある程度理解している方も増えてきました。ですが、この診断名を持つ子どもたちの特性は千差万別なんです。それぞれとよく関わってみないと悩んでいることや困っていることがわからない。一人ひとりに適切な言葉は違ってきます。教育現場で、同じ診断名の子どもはみんなこうなんだ、と判断してしまってはいけないということを感じていたので、それを伝えたくて書きました」

 

よかれと思って言葉をかける周りの人たちの寄り添い方がときに間違っている可能性があることを考えてもらいたかったそう。

 

「この1匹がその後どうなったか続きが気になります」という声もコメントに寄せられたもののその後の2匹について漫画ではあえて結末を書きませんでした。ひとつの答えを提示することで、それが正解と思わせてしまう危険があると思ったからです。ですので、見てくれたかたがそれぞれ『この子にどうやって声をかけてあげたらいいのだろう』と考える機会にしてもらえたらと思います」

 

ネコ先生自身も、教員になったあと診断を受けてASD、ADHDであることが判明。「自分の経験からも子どもたちにしっかりと耳を傾けて寄り添うよう努めています。自分と似たところがある子がいたとしても『その痛みわかるよ!』とは言わないようにしています。やはり感じていることは違うかもしれないということは常に意識していますね」(ネコ先生)

 

同じ教員をしているというフォロワーさんからは「この漫画を引用して生徒に伝えたい」というコメントも。誰に対しても決めつけずに耳を傾け、寄り添うことの大切さについて改めて感じさせてくれます。あなたなら、残された1匹の子にどのような言葉をかけてあげますか?

 

PROFILE ネコ先生さん

新卒4年目の小学校の教員。ネコのイラストで教員目線のつぶやきや日々の様子をTwitterで発信中。

取材・文/加藤文惠 画像提供/ネコ先生