夫婦で一緒にいるとき、どちらかの友人に会ったらどうしますか?多くの人は、パートナーに紹介するのではないでしょうか。紹介されなかったら、「どうして?」と思うのも当然。妻の不可思議な行動に悩む夫がいます。

 

駅に着いたら妻は「知らない男」とタクシーに乗って

「妻が会社の健康診断でひっかかり、精密検査を受けることになったんです。珍しく気弱になったのか、『病院に一緒に来てほしい』と。あまり僕を頼ることがない妻だから、もちろん行くことにしました」

 

そう話すのは、マナブさん(43歳、仮名=以下同)です。結婚して12年たつ妻とは共働きで、子どもふたりを育てています。

 

いつもは強気な妻に意外なお願いをされて、彼は妻とともに大学病院に出かけました。

 

「病院は駅からバスに乗っていくんですが、彼女はタクシー乗り場へと急ぎました。

 

あわてて追いかけると、前のほうに並んでいた男性と一緒に、タクシーに乗って行ってしまった。何が起こったのかわかりませんでした…」

 

マナブさんも追うようにタクシーで病院へ。すると妻はロビーで先ほどの男性としゃべっていました。マナブさんが近づくと、ふたりは手を振り合って別れたそうです。

 

「『なんなんだよ、いったい。誰?』と妻に聞いたら、『知り合いを見つけたから』と。だったら紹介してもらって、3人でタクシーに乗ればよかったじゃないかと言ったんです。

 

でも、なぜか妻はろくに聞いていない。もしかしたら妻の元カレでは?といろいろ想像を巡らせてしまいました」

 

マナブさんは自分が知り合いに紹介してもらえないほど、難があるのかとも考え込んでしまったそうです。その後、妻とはその話をしていないまま。

 

「検査で病気は見つからなかったから、それはよかったです。ただ、あの件に関してはいまだに謎で。僕はそんなに他人に紹介できない夫なんですかね」

 

釈然としないものの、マナブさんは蒸し返すこともできずにいるそうです。

買い物で会った妻の友人「紹介をスルーって…」

同じような声は他の男性からもあがっています。結婚して7年、5歳の子どもがいるユウタさん(38歳、仮名=以下同)も、次のように話してくれました。

 

「休日に妻と息子、3人でショッピングモールに行ったんです。途中で息子と僕がトイレに行きました。

 

妻は『このあたりにいるから』と、婦人服売り場の前で言いました。息子とトイレから出てくると、妻が同世代の夫婦らしきカップルと話している。

 

息子が『ママ』と叫ぶと、妻は僕のほうを見て、あわててそのふたりから離れてこちらにやって来ました。

 

『知り合い?』と聞いたら、『うん、まあ』って。そのふたりのうち、男性はかなりのイケメンで…。

 

『紹介してくれればよかったのに』と言うと、聞こえないふりをして息子に『おもちゃ、見る?』なんて声をかけていました」

 

僕はお世辞にもイケメンじゃないですし、とユウタさんは小声で言います。妻は自分の夫をみっともないと思っているのでしょうか。

「再会時に不毛なマウントをされて」疲弊する妻の言い分は

「その夜、妻に尋ねたんですよ。『どうして僕を紹介してくれなかったの?あっちの男性がイケメンだったから?』と。

 

すると妻は、そういうわけじゃないよ、と口ごもっていました。さらに問い詰めたら『じつは、彼女は中学時代からライバル関係だった』って。

 

うちは妻の実家の近くに住んでいるんです。昼間会った彼女は、夫婦で実家に遊びに来ていたらしい。それでバッタリ会ったというわけ。

 

過去に彼女から嫌がらせをされたりしたのに、偶然会ったら何ごともなかったかのように話しかけてきた、と。

 

しかも『私の夫、都内の大学病院で医者をしているの』とマウントをとってきた。だから、紹介したくなかったって」

 

妻は「あなたを巻き込みたくなかったの。彼女は絶対にあなたも見下してくるから」と、必死で言い訳をしていたそうです。

 

「それってやっぱり僕を紹介できないということでしょ。たしかに僕は中堅企業のサラリーマン。大学病院の医師とくらべられたらかっこ悪いんでしょうね」

 

ユウタさんはそうぼやきましたが、妻の本音は、彼女の言うとおり「彼女と自分の間の険悪な雰囲気に、夫を巻き込みたくなかった」だけかもしれません。

 

夫を紹介したくない心理には、いろいろ理由がありそうです。真意を聞いて話し合ってみたら、お互いをより理解できる一歩となるかもしれません。

 

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里