もうすぐ入学シーズン。新生活に向けて準備を始めている人も多いのではないでしょうか。入園入学は喜ばしいことですが、新調する制服や学用品の値段に驚くことも。3人の子どもを育てるシングルマザーだった馬場加奈子さんは、2010年に学生服リユース店「さくらや」を立ち上げました。起業の背景や、さくらやが大切にしていることについて聞きました。(全4回中の1回)

 

シングルマザーとして生活が困窮するなか起業をした馬場さん

光熱費が払えず電気を止められた貧困の日々

── 馬場さんが、さくらやを立ち上げるまでの経緯を教えてください。

 

馬場さん:私には3人の子どもがいますが、末っ子が赤ん坊のころにシングルマザーになりました。最初は保育園に入れず、ベビーカーを押しながらピザ屋のチラシ配りのアルバイトで生計を立てていたんです。

 

当時の収入は、月5000円ほどのバイト代と、母子手当だけ。光熱費や家賃を払えず、電気を止められたこともありました。「いつか家を追い出されるんじゃないか」と、怯えながら生活していましたね。

 

── その後、保険外交員として働き始めます。

 

馬場さん:うちは長女が障がいを持っているので、「この子が大きくなったら自由に時間が取れる仕事をしたい」と、ずっと思っていて。法人営業なら、経営者の話を聞きながらビジネスの勉強ができると考えて応募しました。

 

しばらくは、営業ノルマを達成するのに必死でしたね。朝から晩まで働く毎日でしたが、当時の上司のおかげで本を読む習慣がつきました。読むと言っても、育児と仕事で忙しかったのでCDブック(書籍を朗読したものを録音した音声コンテンツ)ですけどね。上司からいただいた松下幸之助やカーネギーのCD本を、通勤中に聞くようになりました。

 

本を読むうち、経営者は多忙ななか、常に新しい情報を欲していると気づきました。そこから「歩く情報誌になろう」と決めて、読書と並行して、地域の新しいお店や道路の建設情報など、いろいろな情報を仕入れたんです。すると、営業先で話が弾むようになり、営業成績も上がっていきました。

 

保険外交員として法人営業をしていたころ

── ようやく生活が安定したんですね。

 

馬場さん:それまでは子どもたちに鉛筆さえシェアしてもらう生活でしたが、それぞれに欲しいものを買えるようになりましたね。