「いい加減にして!」と満員電車の中で叱責する妻の言葉を聞いた夫は、「ギャンブルが止められない...助けてくれ」と泣き崩れます。夫とともに妻までギャンブル依存症になってしまった夫婦。どうやって立ち直ったのか、その日々を聞きました(全3回中の1回)。

 

薬物依存症で苦しんだ経験を持つ俳優・高知東生さんと一緒に講演会を行う田中紀子さん

「イケー!」競艇で声を張り上げる彼の姿に

田中紀子さんがギャンブルにハマったのは、30代のとき。現在の夫と出会ったのがきっかけでした。

 

6歳年下の彼は競艇に夢中で、留年を重ねる大学6年生。会社員として働きながら、ダブルワークをしていた田中さんとは、アルバイト先で知り合いました。

 

はじめてのデートは競艇場。ふだんはおだやかな彼がレース中だけは、「オラー!イケー!」と大声を張り上げる姿を見て、「男らしくてカッコいい」と勘違いしてしまったそう。

 

「私は一度離婚しています。最初の夫はいい人でしたが“結婚したら家庭に入ってほしい”と保守的で、私とは性格が合いませんでした。

 

その反動もあり、現在の夫がギャンブルに夢中になる姿を見て、“男の人は少し破天荒なほうが素敵”と思ったんです。

 

夫との交際が始まってから私もギャンブルにハマり、仕事を終えたあと、夜遅くまで夢中に。借金も当たり前の毎日でした」

 

講演会の様子

こうした生活に3年ほどで疲れ果てた田中さん。社会人1年目から続けていた生命保険を解約し、ふたりの給料も返済にあてて借金を完済。

 

ふたりともきっぱりギャンブルをやめ、1999年に入籍しました。

 

「じつはギャンブルに限らず依存症は、一時的にやめるのは比較的容易です。でも、一生涯やめ続けるのは非常に困難。

 

私たちはそれを知らなかったから、“ギャンブルは簡単にやめられる”と勘違いし、後々とても苦労することになりました」