「ツチノコ歌手です、新人賞取った高橋洋子って全然見ないけどいるの?いないの?みたいな」。高橋洋子さんが歌う「残酷な天使のテーゼ」は、今や日本を代表するアニメソングですが、この曲はジワジワと人気が出たもの。当時、売れている自覚はまったくなかったと言います。葛藤とそこからたどり着いた仕事哲学について伺いました。(全4回中の1回)
想定外だった突然のソロデビュー
── 久保田利伸さんや松任谷由実さんのツアーのコーラス隊としてキャリアを積んだ後、1991年にバラードシンガーとしてソロデビューされています。きっかけを教えてください。
高橋さん:実は、バラード歌手としてのソロデビューはまったくの想定外でした。
当時、中山美穂さん主演の月9ドラマ『逢いたい時にあなたはいない…』で流れていたピアノ曲の挿入歌に歌詞をつけて劇中歌を制作するという話があって。
「時間がないので譜面を見てすぐ歌える人」ということで、私に白羽の矢が立ったんです。そこから2週間、慌ててレコーディングをして歌詞も書いていただき。あっという間にデビューしました。
── ソロデビューって、もっと時間をかけて入念に準備するものかと思っていました。
高橋さん:普通はそうなんです(笑)。でも、私の場合は違いました。撮影が間に合わないから、ジャケット写真は私じゃなくて時計の絵だったんですよ。デビュー曲なのに(笑)。
出来上がったのが、「P.S. I miss you」という曲です。しかも最終的には、番組ディレクターの「やっぱりフランス語がいい」という鶴のひと声で、結局ドラマのなかでは流れず、しょんぼりしたのを覚えています。