「異性と行ったらこんなことが…」演出の工夫

── キャッチコピーはスキー場で考えているのですか。

 

山口さん:シーズン前に考える必要があるので、会社のデスク、通勤電車の中、自宅などで考えていますが、その年のキャンペーンのオリエンテーションを受けてから、プレゼンまでの間は、けっこうな時間をかけて考えています。

 

── キャッチコピーの最後に必ず「。」をつけているのはなぜですか。

 

山口さん:最後に「。」がつくのは、コピーライティング的には特別めずらしいことではありません。なんとなく、広告フレーズというよりは、人の想いや熱が感じられるように意識してつけています。

 

── 演出でこだわっているところはなんでしょう。

 

山口さん:10代後半〜20代前半の、大学生と新社会人くらいまでの若い層の獲得が、もともとのJR SKISKIの狙いだったりもします。

 

まだスキーを経験していないターゲット層に、新幹線に乗ってスキー場に行けるのでお酒が飲めるとか、滑ったときの爽快感をアピールしたところで、おそらく響かないと思うんです。

 

なので、当初は「異性と一緒に行ったらこんなことが起きるかも」というようなドラマを描いて、とにかくみんながキュンとするようなセリフや仕草を心がけていました。

 

── 数年前から恋愛から友情にテーマがシフトしているように感じます。

 

山口さん:最近の調査で、スキー場に行くときに恋愛を求めるというより、もともと仲のいい仲間たちとワイワイするのが目的という結果が出ているんです。数年前から、恋愛というよりも、仲間と一緒にというのをキャンペーンにも出しています。

 

でも、私個人としては、皆さん言わないだけできっと恋愛ものを見たいという気持ちがあると思っているので(笑)、どこかでまた恋愛ものの実現をしたいとは思っています。もちろんいい意味での裏切りもないとダメですが。

 

── 今後に期待しています!若手俳優の登竜門とも言われますが、大ブレイクする素敵な方ばかりが出演されていますね。

 

山口さん:スキーウェアを着たときのフォトジェニックさは考えています。このキャンペーンはポスターの威力が大きいので、パッとひと目で魅了できるところというのを大事にして「今年はこの人」という方を提案しています。

 

── 「ゲレンデマジック」という言葉もあります。

 

山口さん:モコモコしたウェアを着て、髪や顔を隠しているのもあるので、「街で会ったらどんな子なんだろう」という心理状態もプラスされます。ミステリアスな部分も含めて、よりよく見えるというのがあると思います。

 

でも起用する俳優さんは最初から元がいいので、スキー場に連れて行くとさらにすごい魅力を発揮しています。

 

── 若者のスキー・スノボ離れについてどう思われますか。

 

山口さん:今は娯楽がたくさんあるし、スノーレジャーはお金がかかるので、ある程度は仕方ないことだと思います。ただ、学生時代にスノーレジャーを経験した人としていない人だと、社会人になってからスノーレジャーをする確率に2倍以上差が出るという調査結果があります。

 

一度経験してみると、雪山でしか味わえない楽しさや高揚感、大自然の雄大さも体感できるし、次回への心理的ハードルも低くなると思うので、まずは最初にスノーレジャーへ出かける「きっかけづくり」として、JR SKISKIキャンペーンが少しで寄与できるといいなと思っています。

 

── 山口さんご自身は、ウィンタースポーツはされますか。

 

山口さん:山形出身なのでスキーも、スノボもします。大学時代はスノボでしたが、最近はまたスキーに戻っています。最近のスキーはギアも進化して、操作もしやすいし、ケガの心配もスノボより低いので。

 

撮影で行ったニュージーランドのスキー場での1枚。雪景色が壮大!

── お気に入りのスキー場はどこでしょう。

 

山口さん:撮影で行ったカナダのバンフ国立公園内にあるサンシャインヴィレッジです。雄大なカナディアンロッキーを眺めながら、超ロングコースを滑ることができてとても良かったです。

 

国内ですと、JR SKISKIの担当でもあるのでGALA湯沢スキー場は、新幹線の駅直結で手ぶらで滑りに行けるのでおすすめです(笑)。

 

── 今シーズンの「冬を取り戻すんだ。」はここ数年とは違ったアプローチをされたと伺いました。

 

山口さん:2020-2021年の「冬の空気を変えろ。」、2021-2022年の「あの冬が呼んでいる。」は、コロナ禍の影響もあって、スノーレジャーの経験層のつなぎ留めに注力していましたが、今年はあらためて若者層をターゲットにする形に戻しました。

 

特に高校時代、いろいろな制限があったまま卒業して、就職や進学した人たちに「今年こそ冬の青春を取り戻そう」という思いを込めてCM、グラフィックポスターを制作しました。ひとりでも多くの方が「冬を取り戻すんだ。」を合言葉にゲレンデで、思いっきり仲間と冬を楽しんでもらえたらうれしいです。

 

PROFILE 山口広輝さん

ジェイアール東日本企画クリエイティブディレクター・コピーライター。主な仕事にJR SKISKI、大人の休日倶楽部、doda、パーソルクロステクノロジーなど。東京コピーライターズクラブ会員、宣伝会議「コピーライター養成講座」講師、宣伝会議賞審査員。

取材・文/内橋明日香 写真提供/ジェイアール東日本企画