迷いを断ちきった校長の言葉
司法試験の合格発表は9月。11月から司法修習が始まるため、年度途中で勤めていた小学校は辞めなくてはなりません。
「年度が始まる前から『司法試験に受かったら退職します』と校長には伝えていました。でも、私自身、担任していた子どもたちが大好きで、離れがたく、教師を続けたい気持ちもあったので、実際に受かって少し戸惑いました。
修習を翌年に延ばすことも可能だったのですが、校長に相談すると『気持ちが熱いうちに行ったほうがいい』と送り出してくれて。年度途中の退職を認めてくれました」
教育現場にやり残したことはあるけれど
「教員を辞めるときに中学3年生の長男に『やり残したことはないの』と聞かれました。考えてみるといっぱいあるんですが、法曹の資格をとっても、もう教員に戻れないわけではありません。もし弁護士としての適性がなければ、教員に戻るかもしれません。
やり残しがなければ戻ろうとは思わないので、やり残したことがあるのもいいかなって」
では、なかでも特に生井さんの心残りだったことは何だったのでしょう。
「通常級で6年生を卒業させたことがなかったんです。1〜5年生は受け持ったことがあったけれど、6年生の担任になって卒業させたかったという気持ちがいちばんあります」
そんな葛藤も抱きながら、現在は弁護士、スクールロイヤーの道に進んでいる生井さん。司法の道で今後目指すことを聞いてみました。
「スクールロイヤー自体が新しい存在なので、教育現場でもどう活用すべきか、まだ開拓されていない感じがします。ただ、それでも教員を助けられるようになりたいです。
また、法教育もやってみたいですね。法律について、小学生が学ぶ機会を提供したいなと思っています」
今は司法修習を終えて、司法修習生考試(二回試験)に合格し、弁護士バッジをもらうことが楽しみだと言います。
取材・文・写真/天野佳代子