船酔いするし獲物は獲れない…海女の仕事は甘くなかった

それまで宗像市とは縁がありませんでしたが、実際に移住してみると、気さくな人ばかり。みんなが「よく来たね」と歓迎してくれました。

 

「ふらっと家に遊びに行ったら、“ちょっとご飯食べて行き”と誘ってくれる人もいれば、“困ったことがあったらなんでも言ってね”と気に掛けてくれる人もいて。食べ物もおいしくて、とても住みやすいです」

 

とはいえ、海女の技術を習得するまでには時間が必要です。海女の採用面接の際、「一人前になるには3〜5年はかかる」と言われました。

 

「スキンダイビングの経験があるから、なんとかなるだろうと思いました。でも、実際はまったく勝手が違いました。

 

海女は船に乗り、漁場まで行くのですが、まず船酔いでヨレヨレに。垂直に潜るだけで精いっぱいで、漁をするどころではありません」

 

アワビ稚貝を放流して成長を見守るのも海女の仕事

それでも最初に潜ったときは、海の美しさに魅了されました。海草がたくさん生えていて、魚たちがのびのびと泳ぐ様子に、「なんてきれいな場所だろう」と感動したといいます。

 

海女は長時間潜るイメージがありますが、多くの場合は30~40秒ほど。何度も潜って漁を繰り返します。ベテランになると、あっという間に獲物を手にします。

 

「アワビやナマコは岩の裏に隠れていることが多く、パッと見ただけではどこにいるのか全然わかりません。

 

それでもベテランの海女は、目視できない岩と岩の間にいきなりズボッと手を入れて、大きなアワビを獲ることもあります。

 

ベテランさんは海の地形が頭に入っていて、“この岩の側面には、毎年獲物が必ずいる”などの経験による知恵があります。私ももっと経験を積み、自分なりの海中地図を作りたいです」