市に残る海女は4人だけ「出産後も続けたい」

当初は「地域おこし協力隊」として宗像市の嘱託職員という扱いで、市から給与が出ていました。

 

任期の3年が過ぎ、いよいよ海女として自立することになります。現在、宗像市の海女は本田さんを含めて4人です。

 

「最初のころの写真を見ると、たったこれだけのウニを獲るのに苦労していたんだと感じることも。まだ学ぶことはたくさんありますが、この3年間で少しだけ成長したと思える部分も出てきました。

 

海女の魅力は、自分の手で食材を獲れるところ。しかもそれを食べて喜んでくれる人がいるところも。

 

以前、料理屋さんで“本田さんが獲ったウニを食べたよ”と言ってもらい、嬉し泣きしたこともあります。

 

ライフスタイルも自然に合わせたものになりました。天気が悪かったら漁に行かないし、“そろそろウニ漁が始まるね”など、季節を肌で感じる毎日です」

 

地域おこし協力隊で同期の魚住由佳理さん(右)とはいまでもLINEでやりとりする仲

現在、妊娠中の本田さん。臨月が近づいてからは夫と一緒に関東に住んでいますが、産後は宗像市に戻り、海女の仕事を続けたいと考えています。

 

とはいえ、出産も育児もはじめての経験ばかり。すべてが手探りの日々が始まります。

 

「最初に“こうするべき”と理想像を決めてしまうと、うまくいかなかったときにつらくなりそうで。

 

だから、そのときの状況に合わせて、柔軟に形を変えて対応していきたいですね。10年後、20年後も楽しく笑っていられたら最高です」

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/一般社団法人シーソンズ