「ジェンダーレス男子という言葉が広がった時期と、僕のメディア露出が増えたタイミングが重なった印象はあります」と話すゆうたろうさん。放送中のドラマParavi『来世ではちゃんとします 3』(テレビ東京系)では女装男子・栗山凪役が注目され、中性的な魅力で多くの支持を集めています。カテゴライズされることに対して感じることとは?(全4回中の3回)

 

ゆうたろうさん
役の幅が広がり、かっこいいキャラクターを演じることも増えてきた印象

わかりやすく知ってもらうきっかけになった

── ファッションへのこだわりなど、個性的なゆうたろうさん。メディアなどで紹介されるとき、ジェンダーレス男子といった形でカテゴライズされることに、抵抗感はないですか?

 

ゆうたろうさん:今は特に気にしていないですね。わかりやすく知ってもらえるのであれば、それはそれでいいんじゃないかなって考えています。

 

新人類みたいに「こういう人種もいるんだよ」と、わかりやすくメディアが紹介して、僕を知ってくれる人が増えるきっかけなので、ポジティブにとらえています。

 

──「今は」ということは、ポジティブに感じられない時期もあった?

 

ゆうたろうさん:15歳くらいから、ただ好きなことをやってるだけなのに、「このカテゴリー」とか「あのジャンルね」と言われて。最初は正直、「ほかの(ジェンダーレス男子と呼ばれている)人と、なにが一緒なんだろう?」と違和感を覚えました。

 

まあ本音を言えば「一緒にしてほしくない」って思っていた時期もあったかな(笑)。

 

── それぞれの個性があるわけで、やっぱりそう思いますよね。

 

ゆうたろうさん:僕はスカートをはいたり、メイクをしたりはするけれど、女の子になりたいわけでもないし、「男の枠でいたい」とかって、枠やジャンルみたいなものはないんです。

 

日本では個性を見るよりも、何系とかカテゴリーで括りたがるところがあるし、世の中で言われることも変わっていくじゃないですか。

 

だから自分の意見や選択を大事にしようと思うし、「自分らしさ」っていうのを常に忘れないでおこうと。そう考えたらカテゴライズやジャンル分けも、「知ってもらうきっかけ」と思えるようになりました。

 

ゆうたろうさん
でもやっぱりかわいい!

「かわいい」も「かっこいい」も嬉しい

── かわいいとかっこいいのハイブリッドなゆうたろうさん。「かわいい」や「きれい」、「かっこいい」と言われるのとでは、どちらのほうが嬉しいですか?

 

ゆうたろうさん:その日によって違うし、毎日変わります。でも、どちらも嬉しいですよ。

 

どっちになりたいとか、どうしていきたいっていうのは僕のなかではなくて、言ってくれる人の言葉に少しも嘘がなければ、全部受け止めたい。

 

説明が難しいんですけど、自分が「今日はかっこいいでいきたいな」とか「かわいく見られたい」よりも、人から「こう見られているんだ」に対する意識のほうが大きいかもしれません。

 

 ── 自分から狙った反応がほしいわけじゃない、と。

 

ゆうたろうさん:感じたままを楽しんでもらいたいです。

 

かわいいと思われたくて、「この服を着て、こうメイクしよう」とかはなくて、自分がそのとき好きだと思うファッションやメイクをする。狙っていなくて、そのときどきのスタイルを通じて「どう感じてもらえるか」を意識するウェイトが高いですね。

 

それに、これだけいろんな方向からの褒め言葉をいただけるって、あんまりないと思っているんです。

 

「SNSでの印象と全然違いました」「会ってみると意外と男っぽい」とかも言われますが、そういうギャップを感じてもらえるのも嬉しくて、「それぞれのゆうたろうとして楽しんでほしいな」と思っています。

 

ゆうたろうさん
「かわいい」と「かっこいい」どちらもハイレベルなのがすごい

いつ「かわいい」と言われなくなるのか

── 女装男子を含めてかわいい役が多い印象ですが、最近はかっこいいキャラクターを演じることも増えています。

 

ゆうたろうさん:最近「顔が男になってきた」とか「大人びた」と、言われるようになりましたね。

 

去年くらいから「色気が出てくるようになった」と言っていただくこともすごく増えて、「なにかあった?」って聞かれるんですけど、自分ではまったく自覚していなくて…。

 

年齢を重ねるごとに雰囲気や印象も変わっていくんだろうな…って。そういう変化も、自分のなかで楽しみたいです。

 

── デビュー当時の少年っぽさから年齢や経験を重ねて、すごく素敵に変化していると思います。

 

ゆうたろうさん:ありがとうございます。でもいつ「かわいい」って言われなくなるんだろう…っていうのは、ちょっと気になっていますけど(笑)。

 

お仕事として女装するのは、めちゃくちゃ自分のなかで楽しいコンテンツのひとつ。自分だけではできないことだし、「いつまでそういうオファーをいただけるかな?」というのは考えますね。

 

たとえば凪ちゃんは自分自身を重ねたり、役を通して成長してきたり、思い入れも強いですし…。

 

ゆうたろうさん
ふとした表情に大人の男の色気が

役に向き合うことへの変化と意欲

── 自分自身の成長を実感できる意味でも、『来世ではちゃんとします』シリーズの凪ちゃんは大きな存在なのですね。

 

ゆうたろうさん:21歳のときに、初めての女装役で凪ちゃんと出会いました。

 

見た目はかわいいけど、芯の強さやぶれない軸、見栄やかっこつけているわけじゃないのに、かっこいい。「なんでこの状況で、こんな言葉を言えるんだろう?僕だったら言えないな」ってセリフがたくさんあって。

 

きっとそこに至るまで本当にいろんな葛藤があったと思うし、演じる僕がそれを背負って心から言えるようになりたい。凪ちゃんを心のなかで育てている感覚があって、一緒に成長しているというか、人間力がすごく鍛えられました。

 

凪ちゃんみたいな人に出会いたいし、こういう人になりたいと思うし、「10代のうちに演じていたら、人生観が変わっただろうな」と思わされる子です。

 

── そうした役と出会えて、役者としての幅もかなり広がっている印象があります。

 

ゆうたろうさん:役への取り組み方では、もちろん役者として台本を読み込むし、役づくりはしますけど、つくりすぎたり、完璧にしていかないように…。その場の雰囲気やかけ合いを含めて現場で100%にする意識で、柔軟に対応できるようにしています。

 

僕自身が役を通して「自分は、こんな表情をするんだ」って思う瞬間があるし、これまでのイメージとは違う役もいただけるようになったと感じています。

 

── 今後、やってみたいキャラクターはありますか?たとえば、悪役とか…。

 

ゆうたろうさん:やってみたいですね!最後の最後に「めちゃくちゃいい人だったはずなのに、こいつなのかー」ってなる人(笑)。

 

ちょっとずつ本来の自分とはギャップのある役は増えてきましたが、もっと自分の可能性を見いだせるような、役や作品にチャレンジしていきたいです。オーディションなどにも、積極的に参加したいですね。

 

ゆうたろうさん
こんな優しげな雰囲気で「実は悪い人」な演技も見てみたい

 

PROFILE   ゆうたろうさん

1998年広島県生まれ。2016年にデビューし、モデル・俳優として多くの作品で活躍。2022年12月主演映画『僕らはみーんな生きている』が公開され、1月よりドラマ『来世ではちゃんとします 3』に出演中。

 

取材・文/鍬田美穂 撮影/二瓶彩 ヘアメイク/三浦彩