上司と喧嘩、会社を辞めようと決意

── 染色に目覚めたのはどうしてでしょう。

 

青木さん:
染色に魅了されたとか、そういうかっこいいものではないんです。

 

当時、世の中で気候変動が話題となり、日本もいろんな企業がエコロジーと突然言い出して、二酸化炭素を減らし、環境に配慮していることが大事だという風潮になりました。ワコールもそんなエコロジカルなことをする部署を立ち上げて、各部門の統括責任者を呼んできて、トータルライフブランドを作ろうということになったんです。

 

私は当時はパジャマ、部屋着の部署にいて、地球に優しいパジャマと言われても関心もなく、困りながらやっていたのですが、別の会議で知り合った上司が、奈良の草木染めの工房「益久染織研究所」の廣田益久さんを紹介してくれて、会いに行ったんです。

 

当時、私は28歳ぐらいの浮ついた若造で「ちーす、地球に優しいパジャマ作りたいでーす」っていう感じでした。

 

古着がもともと好きで、学生時代は裏原宿あたりの古着屋に行って、ジーンズにバイト代をつぎ込んでいた人間なんですが、その研究所の服の雰囲気が古着に近くて、どうやってできているのかと聞くと「植物の根っこの色からだ」とか言われるんです。

 

びっくりしていたら「やってみるか」と言われたので体験させてもらったら、いい藤ねずみ色に染まったんです。

 

自分の好きな古着っぽく染まることと、自分でできるってことに驚いたんですね。

 

ただ、それで、染物に目覚めて、会社を辞めて染め屋を目指しました!っていうわけじゃありません。

 

仕事もだんだん職責が上がって大変になってきて、廣田さんに愚痴を聞いてもらいに行くようになったんです。

 

そして、話を聞いてもらっているうちに、上司と喧嘩する出来事がありまして。その上司は良い人なのだけど、僕が幼かったんですよね。「やってられないですよ」と廣田さんに言いに行ったら、「辞めてうちで手伝ってみるか」と言ってくれたから、転がり込んだんです。

 

── 思いきりましたね。

 

青木さん:
確かに会社員は給料は良かったけど、給料700万円でも300万円でも変わらないんじゃないかと思ったんです。友達に、皿回しをしている芸人がいましたが、自分より楽しそうで。ちょっと良い酒が飲めないとかを我慢すれば、給料は低くなってもなんとかなると思って。子どももいたけど、安きに流れてみたという感じです。

 

「染めに燃えた」というより、エンジンの出力を落としても、生きていけるんじゃないかと思ったんです。

 

草木が生む青木さんの店tezomeyaの色たち