きょうだいで「育て合ってきた」幼少期
── 森さんは5人きょうだいの長女ですね。
森さん:
いちばん下だけ年が離れているので、実際には4人きょうだいで育って、いちばん下の妹がひとりっ子のようでした。末っ子の妹にとっては、きょうだい4人が親で、うちの両親はおじいちゃん、おばあちゃんみたいな感じですね。私は長女なのですが、次女のほうがしっかりしていますよ。
みんなで末っ子の妹を育ててきたので一度子育てを終えていた気分でいましたし、家にも動物がたくさんいるので、娘が生まれたあともメンバーがひとり増えただけという感覚でした。
── きょうだい仲は良いのですか。
森さん:
みんなで同じ学校に通って、家でもずっと一緒なのでよく喧嘩もしましたけど、みんなで助け合っていました。今は、お互いの子ども同士も仲がいいので遊びにも行きますし、ずっといい関係です。
今になって「私たち、きょうだいで育て合ってきたよね」って妹と話すんです。朝もお互いに起こして、学校に行く用意をするのも自分たちでしていました。ママはもちろん大変だったと思うんですけど、自分たちでできることは、支え合ってしていました。
──お母さんはどんな方ですか。
森さん:
ママは本当に子どもが大好きなんです。今でも子どもが欲しいって言いますよ。私の娘と遊んでいるのを見るのが面白いのですが、4歳児と同じレベルで遊んで、同じレベルで本気で喧嘩するんです(笑)。いろんな意味でうちのママはクレイジーです。そういう大人はなかなかいませんね。
── お母さんは愛情深い方なんですね。
森さん:
きょうだいが5人もいたら、家事や子育てを全部完璧にするのは無理です。学校でお弁当があるときも、周りのお友達のものは可愛くていろいろな種類のおかずが入っていたんですが、うちはシリアルとお金が入っていて。「ミルクは買って入れて」という意味です(笑)。
フランスパンで作ったサンドイッチのときもありました。でも、子どもながらにママはできることをしてくれているというのが伝わってきました。
ママはアメリカ人ですし、きょうだいも多いし、うちは周りとは何もかもが違っていましたが、人と比べることはありませんでした。ママはただ、毎日を明るく過ごしていて、たくさん遊んでくれた思い出があります。
── 毎日を明るく過ごすのは、簡単なようで、なかなかできることではありません。
森さん:
私も全部を完璧にしようとは思わず、そのときにできることをしようと思っています。日本のお母さんもお父さんも、いろいろなタスクをこなしていて、本当にすごいです。きっと、手間をかけたぶん、いつか返ってくるでしょうね。でも手をかけすぎて子離れをしたときに何も残っていないとならないように、バランスよくできたらと思います。
── 森さんが娘さんに願うことはなんですか。
森さん:
今の世の中もそうですが、これから先はもっと生きにくくなると思うんです。携帯やSNSもあって、私たちとの時代とはだいぶ違っています。公園に行っても「あれもダメ、これもダメ」と書いてあって。
さすがに公園で虫を取ってはダメという注意書きを見たときは、かわいそうになってしまいました。移住する方も増えましたが、その気持ちもよくわかります。
大変な世の中だからこそ、娘にはうちのママのように、毎日をハッピーに、笑顔で過ごしてもらえたらと思っています。
PROFILE 森 泉さん
19歳でデビュー後、モデル・タレントとして、テレビや雑誌など幅広く活躍。モデルとしてパリコレクションにも出演。2018年には女の子を出産し、30匹以上のどうぶつたちに囲まれて楽しく暮らしている。
取材・文/内橋明日香 写真提供/森 泉