人生をかけて「ふたごじてんしゃ」を普及させたい
ただし、実際に三輪自転車に子どもを乗せて走らせると、デメリットにも気づきました。
三輪自転車は、速度が上がったときにバランスを崩しやすいのです。スピードを出すと片輪が浮き、転倒するおそれがありました。
そこで自転車にメーターをつけ、片輪が浮かない速度を測ったところ、時速14km程度であれば安全に走れることがわかりました。新しく作る車体には、時速14km程度で走行できるようにギア比を変えました。
道路交通法で定められた長さ190cm、 幅60cm以内の寸法もクリア。安全基準も満たし、自転車が走れる場所を走れます。
双子や年子でも安心して乗せられる「ふたごじてんしゃ」を、みずからの人生をかけてでも普及させたいと考えた中原さん。
2016年には「株式会社ふたごじてんしゃ」を設立しました。
「これまで三輪の子どもを乗せられる自転車がなかったのは、商品開発の主体が男性だったからでは?と思います。
子どもを乗せてゆっくり走行するときに、体重の軽い女性がバランスを崩しやすい大変さや、腕力がなくてハンドル操作がふらつくなどの苦労に気づかなかったのでしょう。
商品開発の経験がなかった私が情熱を傾けられたのは、ママと子どもが安全に自転車に乗って、楽しく過ごせるようにしたかったから。
だからこそ、最初は誰にも理解してもらえなくても、イメージ通りの自転車を作れたんだと思います」
取材・文/齋田多恵 写真提供/中原美智子