「双子と気軽に出かけられる、安全な自転車がほしい!」その一心で、40代になって世界初の三輪の親子用自転車を開発した中原美智子さん。企画・開発の仕事は未経験から、3児の母が理想の自転車を作りました。ひたむきに夢をかなえた中原さんにお話を聞きました。
「双子を乗せた自転車は不安…」家に閉じこもるように
長男が生まれた7年後の2010年に、双子を出産した中原さん。双子との楽しいお出かけに憧れましたが、待っていたのは厳しい現実…。双子は自転車で移動するだけでもひと苦労でした。
「長男のときは、自転車で公園に行くのが大好きでした。でも、双子が生まれてわかったのですが、前と後ろに子どもを同時に乗せる二輪自転車はバランスを崩しやすいんです。
ある程度スピードを出しているときはよくても、子どもの乗り下ろしや信号待ち、ゆっくり走ると転倒することがしばしば。
転ぶと子どもたちを危険な目にあわせた、と自己嫌悪におちいって…。今後は成長した子どもを自転車に乗せるだけでもさらに大変になると思うと、楽しい未来が想像できませんでした」
他の移動手段を考えても、双子用ベビーカーはひとり用のものよりも幅広で、重いうえに子どもたちが小さい時期しか使えません。
車も駐車場を探す必要があるため、ちょっとした買い物などの移動には不向き。中原さんは、だんだん外出自体が嫌になり、家に引きこもるように…。
「あるとき転倒し、“こんな生活もう嫌だ!”と限界を感じて。“2度とこけない自転車に私は乗るんだ”と決めました。
当時は“二輪だから転ぶんだ、子どもを後ろに2人乗せられる三輪自転車だったら安定しているだろう”と、安易に考えていました」