震災のときに考えて考えて“表現を続けよう”と決意

── そう考えるとちぎり絵を作ることには、さまざまな意味があるのですね。

 

ウメチギリさん:
それでも私自身、ちぎり絵を作ることが何の役に立つのか自問自答した時期もありました。

 

それは東日本大震災のとき。東北に暮らす私は、表現活動よりももっとしなければならないことがあるのではと、作家活動を続けて良いのか迷っていたのです。

 

来る日も来る日も自分にできることは何かを考えた結果、やっぱり私にはちぎり絵しかないと思ったんです。その時期に「ひとふでちぎり」と名づけたオリジナルの技法が誕生しました。

 

すべて手でちぎった「ひとふでちぎり」

── ひとふでちぎり、ですか?

 

ウメチギリさん:
これは、一筆書きのように紙をちぎりながら文字を形作っていく技法です。文字をつなげるようにちぎっていくことで、植物が上に向かってぐんぐん伸びていくようなイメージを表現しています。

 

命や希望がどこまでも途切れることなく続いていき、いずれ花が咲いて実りますように。そんな思いで紙をちぎっています。

 

いまも前例のないコロナ禍で、心が苦しくなったり未来に希望が持てなくなったりする人も少なくないと思います。

 

だからこそ、自分の作品が少しでも誰かの安らぎや温もりになったら。そんな祈りを指先に込めて、ちぎり続けていきたいです。

 

PROFILE  ウメチギリさん

ちぎり絵作家。養護学校勤務を経て、2002年から自己流でちぎり絵制作を開始。2010年NHKまる得マガジンの講師を務める。挿絵、装丁、チラシ、ポスター、パッケージなど手掛ける


取材・文/木村和歌菜 画像提供/ウメチギリ