一針一針、生み出す喜び

── 作家活動のなかで、いちばんの喜びはどんなことでしょうか?

 

SUIMINさん:
やはり、完成したときの達成感でしょうか。「できた!」という喜びもありますし、完成する作品の内容にも毎回変化がある。それがいいですね。

 

刺繍はやればやるほど上手くなるので、必ず前回よりも良くなってるところがあるんです。6年経った今でも、「あら、上手くできてる」と感激することもありますし、それがずっと刺繍を続けていられる理由だと思います。会社員時代には、感じることのできなかった日々の変化が嬉しいんです。

 

逆に刺繍を終えたあとの、バッグやポーチに仕立てる作業は今でもあまり慣れません。「ここで失敗してしまったら終わりだ!」といつも緊張してしまうんですよ(笑)。ずっと刺繍だけしていられればいいなあ、と思ったりします。そのくらい、刺繍が好きなんです。

 

「運ぶねこ」シリーズの市販されている雑貨の例
「運ぶねこ」シリーズの雑貨は大人気を博している

── 今度は、どのような展開を考えていらっしゃいますか?

 

SUIMINさん:
ここ最近は、図案本『猫と草花の刺繍』(日本ヴォーグ社)の制作に時間をかけて頑張っていました。その記念として12月に個展『SUIMINの秘密基地』を開催するので、今はその準備を頑張っています。たくさんの方にお会いできるとうれしいですね。

 

日ごろ、あまり「SUIMINのブランドをこうしていきたい!」といった構想を考えているタイプではないんです。目の前のことに取り組んでいるだけで、精一杯になってしまって。

 

ただひとつ大事にしたいのは、「原点は刺繍」ということですね。どんなグッズの展開も刺繍作品ありきのものだと思っているので。これからも一針一針、丁寧に取り組んでいきたいと思います。

 

── 最後に、近ごろの作品でイチオシのものを教えてください。

 

SUIMINさん:
最近はビーズを縫うのも楽しいですね。ビスケットの形のブローチに仕立てたりしています。新しいモチーフやデザインのものもたくさん生み出していきたい。頭のなかは、いつもアイデアでいっぱいなんです。

 

ビーズを使った刺繍作品
まるでお菓子のようなビーズを使った作品

 

PROFILE SUIMINさん

2016年より刺繍作家として活動。小脇に変わったものを抱えて2足歩行で歩く「運ぶねこ」シリーズが人気に。同キャラクターをモチーフにした日用雑貨のデザインも手がける。初の図案本「猫と草花の刺繍」(日本ヴォーグ社)が2022年11月1日発売。

取材・文/中前結花 画像提供/SUIMIN