「運ぶねこ」シリーズが、SNSで大人気の刺繍作家・SUIMINさん。お寿司に餃子、焼きいも…次々と愛らしい作品を生み出すSUIMINさんにとって、作る喜びは「日々の変化」なのだといいます。刺繍への想いについても、たっぷりとお話をうかがいました。
1冊の本との運命の出会い
── 現在では人気作家のSUIMINさんですが、刺繍はどのようなきっかけで始められたのでしょうか?
SUIMINさん:
きっかけは、一冊の本でした。Facebookで、とある料理研究家さんをフォローしていたのですが、その方が「妻の新刊です」と奥様の著書を紹介されていたんです。それはウールのステッチについてまとめたもので、当時は疎くて存じ上げませんでしたが、刺繍作家・樋口愉美子さんのご本でした。
それまで「刺繍」というと、 私のなかでは少しレトロで懐かしい手芸のようなイメージだったんです。ですが、その本の表紙を見て「こんなにモダンでかわいいモチーフを作れるんだ!」とすごく新鮮な驚きがあって。
だけど、すぐに始めたわけではありません。当時は会社員をしていて、すごく毎日が忙しかったので、その本もamazonの「欲しいものリスト」に入れただけ。会社を辞めて時間ができたとき、ふとその本のことを思い出してようやく購入したのが、始まりでした。
── 運命の出会いだったんですね。
SUIMINさん:
そうですね。本当に感謝しています。
最初は、棚の目隠しに使っていたカーテンに樋口さんの図案を映して、全部埋めるまでとにかく練習してみたり。「意外とできるかも…?」と思ってみたものの、本と比べると、当然ながら樋口さんの刺繍の美しさには到底及ばなくて。練習して、練習して、徐々に徐々に技術を磨いていった感じです。
進めていくうちに、社会人になって間もないころ、仕事がうまくいかずに落ち込んでいたときのことを思い出しました。
そのときは、粘土を買ってきて置きものを作ることで、モヤモヤとした気持ちを発散させていました。私のなかで、ものづくりにはどこかそういう効用があって、自分の内側にあるものを表現することで、すごくスッキリとした気分になれることに気づきました。