大手企業から、オンラインカウンセリング事業を展開する株式会社cotree代表に転身した西岡恵子さん。転身を決めた背景には、困難な環境で自分を育ててくれた母への思い、気を張り続けた10代の記憶がありました。西岡さんに、弱い立場の女性や子どもが抱える生きづらさについて聞きました。
感情を表に出すのが苦手な子ども時代
── 森永製菓、サイバーエージェントなどの大手企業を経てcotree代表に就任されました。「いつかはメンタルヘルスケア領域で仕事がしたい」という思いがあったそうですね。そう考えるきっかけは何だったのでしょう。
西岡さん:
「助けて」がずっと言えないまま子ども時代を過ごしてきた体験が、大きく関係しているように思います。
私は幼い頃の記憶があまりないんですね。
私に手をあげようとする父を母が必死に止める姿や、母が父から暴力や暴言を受けていたシーンなど、断片的な映像はあっても、それ以外の記憶はすっぽり抜け落ちていて。
父の暴力が原因で両親は離婚し、私が幼稚園のときに母子家庭になりました。その後、私が小学生のときに母が再婚したのですが、わずか数年後に新しい父が病気で亡くなり、再び母子家庭に。
そうした環境で育ったからか、自分の感情をありのままに表に出すことが苦手な子でした。中高時代の私にとっては、「ああいう家庭環境の子だから」と思われないことが最優先ミッション。
勉強もスポーツも必死にがんばっていたので、周囲からは優等生に見えていたかもしれませんが、田舎の小さなコミュニティで排除されないように、どんな振る舞いをすればいいかを常に考えている子どもでした。