あの頃の母にカウンセリングがあれば
── 母娘はどのような関係だったのでしょう。
西岡さん:
母のことは尊敬していますし、家族仲もよかったと思います。
一方で、娘としては複雑な思いも抱えていました。
母が私と弟や妹を育てるためにがむしゃらに働いている姿をずっと間近に見ていたので、「お母さんって、自分の人生を幸せだと思えているのかな?」「世間が考える“理想の母親像”に縛られて、自分を犠牲にしているのでは?」「私たちの存在のせいで母がそう生きているならば、私は生まれて来ないほうがよかったんじゃないか?」という思いがずっと拭えなかったんです。
── 西岡さんがその息苦しさから解放されたのはいつでしたか。
西岡さん:
大学生になってからです。地元を離れて進学した大学で、多様なバックグラウンドを持つ友人たちと親しくなれたおかげで、徐々に自分の本当の気持ちを外に出せるようになっていきましたね。
── とはいえ、困難な環境にあって、三人のお子さんを育て上げたお母様はご立派だと感じます。
西岡さん:
そうですね、ただ、もしもかつての母が今の時代のように気軽にカウンセリングを受けられていたら、母も私も、「もっと気負わずに自分の人生を生きられたかもしれない」という想像はしてしまいます。
「母親」として生きるために他のことすべてを犠牲にするのではなく、自分の心への向き合い方を教えてくれたり、サポートをしてくれたりする存在があったならば、母も全然違う人生を歩んでいたかもしれません。