28歳で「音楽はやりきった」ヨガスタジオの事務に転身
── それまでは芸能活動など表舞台の仕事だったわけですよね。事務のような一般的な仕事をすることを決断するのには勇気がいったのでは?
Maiさん:
アルバイトすら経験がなかったので、自分は社会に出て通用するのかなっていう不安はありましたね…。最初の頃は毎日緊張していました。
芸能界って日々刺激のある世界で、毎日同じことをやるわけじゃないんですよね。でも一般の社会で働くって、毎日同じ時間に起きて、同じ時間に出社する…それが大前提じゃないですか。そういう当たり前のことが自分にできるのか、不安でした。
── 事務として採用されたヨガスタジオで、どのようにしてヨガの知識を身につけたのでしょうか?
Maiさん:
ヨガスタジオでは、最初はインストラクターではなかったので、事務仕事しかやっていなかったんです。でも自分のリフレッシュタイムとして、仕事後にレッスンを受けても良いよって言われていて。試しにレッスンを受けて、けっこう楽しいなと思い始めました。
しばらくして、会社から「店長になりませんか」というお話をいただいたんです。店長になるんだったらもっとヨガのことを知らないと!と思い、ヨガのスクールに通うことにしました。

── すごい行動力ですね。ヨガを学んでいくなかでの気づきや、考え方が変わったことはありますか。
Maiさん:
ヨガの教えにある「結果に執着しない」という考え方に共感したんです。
芸能界は白黒がはっきりした世界で、どんなに練習しても1回のライブで失敗したら台なしになってしまう。だから、「失敗しちゃいけない」って小さな頃からずっと言われ続けてきました。
── シビアな世界に身を置いていたのですね。それがヨガの世界では違ったということでしょうか。
Maiさん:
ヨガでは、「結果じゃなくて、今この瞬間に全力を出すことができたのなら、あとのことは気にしなくていい。それがあなたの全力ならそれで良し」っていう考え方。自分をちゃんと認めてあげなさいという教えに、こんな世界があるんだ!って驚いたんです。
それまではいつも肩の上に重いものを背負っている感じだったのですが、ヨガを習ってからは心がすごく楽になった。気持ちがフワッと軽くなった瞬間をいまだに覚えています。
── まさに生まれ変わったような瞬間だったのですね。
Maiさん:
はい。それからどんどんハマっていきましたね。でも当時は店長として勤めながら学校に通っていたので、すき間時間を活用してヨガを勉強するしかなくて。3時間空いたらすぐにレッスンを受けに行っていました。そうしてなるべく長い時間ヨガに触れることで、最初は硬かった身体もどんどん柔らかくなり、ポーズも深まっていきました。
── ヨガインストラクターになって、芸能活動が役立ったと感じる部分はありますか。
Maiさん:
インストラクターになって、ライブとヨガのレッスンって似ているなって思ったんです。ライブは目の前にたくさんの人がいて、音楽を使ってコミュニケーションをとっていく。どんなに練習しても、ライブは何が起こるかわからないし、アドリブ力もすごく必要だったりする…そこはヨガと一緒だなって。そういう意味で、ステージに立つ経験をしていて良かったなと思います。
PROFILE Maiさん
1986年生まれ。1998年にZONEに加入。2001年にシングル「GOOD DAYS」でメジャーデビュー。ZONEではベースを担当。代表曲は「secret base〜君がくれたもの〜」など。札幌市在住で、現在はヨガインストラクターとして活動中。
取材・文/池守りぜね 写真提供/Mai