母親の死で目が覚めたいま「大切」にしたいこと
そんなとき、実家の母親が倒れたと連絡がありました。駆けつけたものの、母はすでに亡くなっていました。
「田舎暮らしの母は贅沢ひとつしたことがありませんでした。私に貸した100万円があれば、行きたがっていたハワイにも行けたのに。
私、何をしているんだろうと目が覚めました。一緒に来た夫は、その後の葬儀などの打ち合わせを全部引き受けてくれた。泣くだけで何もできない私を気遣ってもくれました」
生活時間がすれ違い、夫とは心の行き交う会話もできないと不満を抱いていたミナコさんですが、いざというとき支えてくれたのは夫でした。
「ようやく夫に心から感謝して、心から謝りました。すると夫は『いろいろ考えたけど、オレもいけなかった。ごめん』って」
以来、週末は義母に自宅に来てもらうことにしました。苦手だった義母も今ではすっかり丸くなり、何かしてあげると「ありがとう」と微笑みます。
ときには義母が腕をふるって料理を作ってくれることもあるそうです。
「ホストにはまった1年間、私は何に飢えていたんだろうと思います。現実に向き合わないまま、どこか逃げていた。家族からも自分の人生からも」
いま、彼女は資格をとるために通信教育で勉強を重ねています。「人は変われると信じて頑張っています」と話すミナコさんの表情は、とても明るいものでした。
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里
※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。