ネイルは唯一のオシャレ やめられないけれど…
人は変わるものです。変わったところで内面がすっかり入れ替わるわけでもありません。ましてサユキさんは、主義主張があって「自然派」だったわけでもないそう。
好きだからショートカットにして、パーマをかけないのは面倒だったから。化粧は匂いが好きではなく、落とすのが手間だからという理由でした。
「化粧も髪型も鏡を見ないと確認できないけど、ネイルは自分の目で見ることができる。友だちに『キレイね』『すごく素敵!』と言われるとテンション上がる。
おしゃれに興味がなかった私が唯一、好きになったのがネイルなんだから、好きにさせてよと夫には言いました」
ただ、夫は「人工的なことはするな」派だったようです。
「もって生まれたものを大事にしたほうがいいと思う。娘たちに悪影響が及ぶのは困る、と夫は言うんですが、たかがネイルで“悪影響”ってどういうこと?と笑っちゃいました。
娘を持つ父親の独特の心理なのか、うちの夫が神経質すぎるのか。後者だと思いますけど」
学校が始まったため、娘はネイルを落として登校。サユキさんは、また新たなデザインにチャレンジするつもり。
ささやかな楽しみを夫の好みでつぶされたくないと彼女は言います。突然発覚した夫との間の火種。今後、この攻防がどうなるのか、サユキさん自身は不安も楽しみもある複雑な気持ちだそうです。
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里
※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。