コロナ禍によって、家飲み人気が依然として続いています。そんなとき、お酒のお供になるのが「おつまみスナック」。この市場を切り拓いてきたのが、「CRATZ(クラッツ)」や「Cheeza(チーザ)」を販売する江崎グリコです。マーケティング担当を務めた小林正典さんに新市場開拓の秘訣を伺いました。

 

笑顔で話す小林さん

王道からニッチへ販売戦略を切り替えて

── 今でこそスーパーなどでよく見かけるおつまみスナックですが、「クラッツ」「チーザ」などがこの市場を切り拓いたそうですね。

 

小林さん:
はい。当時、私は32〜33歳ごろで商品開発企画部社員でした。2002年ごろ、グリコは菓子業界では売上げ上位のメーカーでしたが、スナック市場では存在感がなかったんです。

 

そこで、同じスナック市場でも、王道ではなく、まずはニッチではあるけれど市場を創造し、それを顧客の声に耳を傾けながら大きくしていく、そして、そのなかで圧倒的なナンバー1をとる、という選択をチョイスしました。

 

世の中も不況が続いていたのに加え、スーパーやコンビニが届け出をすればアルコール販売ができるようになった時期です。

 

若いサラリーマンの価値観も変化し、仕事終わりに上司と外で飲むのではなく、自宅でお酒を楽しむようになっていきました。お酒の種類も多様化し、チューハイの種類も増えていました。

 

一方で、おつまみは伝統的なものがまだまだ多く、若者向けの商品がありませんでした。そこに市場を見出したんです。

 

── ビジネスにおいて新しい市場を開拓するというのは、大変なことも多かったのでは。

 

小林さん:
そうですね。狙った市場がニッチだと、まず社内外から信じてもらえないんですよね。

 

社内の合意形成をしなくてはならないのですが、「売れるの?」と言われ続けました。

 

なので、試作品を作って何百人ものお客様にインタビューをして。研究所の社員も現場に連れていき、「いいって言っているでしょ」と説得しました。

 

結果、近畿地方のコンビニ100店舗、スーパー10店舗に売り場を作らせてもらって、まずは「クラッツ」を置かせてもらいました。その後、北海道エリアでテストをし、次に東日本で販売をして、全国展開するというふうに段階を踏みました。