── 月謝は開業当時から無料だと伺っています。

 

樋川さん:
かつて、大手企業が芸能スクールを青森でしていたこともあったのですが、すぐ撤退。採算が取れないと無理だということは私もわかっていますが、今もうちは月謝無料を続けていて。正直、きついんですけど、今なんとか売上が立ってきています。最初は自分のポケットマネーの持ち出しで、「もうだめだ」というときが本当に何回もありました。

 

でも人からの援助のお金はことごとく断ってきました。いざ何かあったときに、人に迷惑をかけたくない。自分が身銭をきるだけにしたいと思っていました。家業の自動車整備、販売を頑張って、なんとか繋いできました。

 

りんご娘。
りんご畑で青森特産のりんごをPRするりんご娘。メンバーにはそれぞれ、りんごの品種の名前が付けられている

今では笑い話ですが、アクターズスクールを作った2000年当時、先輩や後輩に教員が多いので情報交換をしたら、「弘前アクターズスクールプロジェクトは怪しいから気をつけろ」と言われていたらしいんです。実際、怪しいと思いますよ。東京ならわかりますが、「青森で芸能スクールを開いてタダで歌をやるなんて嘘だ。女の子を使って金儲けをして、売り飛ばそうとしているんじゃないの」とか。昔は誹謗中傷をかなり受けました。

 

── 地域を盛り上げるためにアイドルを育成しようと思った理由はなんですか。

 

樋川さん:
アイドルならば、小さい子からおじいちゃん、おばあちゃんまで見に行けるし、地元なら生で会える。ショッピングセンターや商店街の歩行者天国、りんごのイベント、市町村の夏祭りにどんどん出ていって、地元の人に愛されながら、いつかそれを見ている子どもたちが夢を持って、「いつかなりたい」と思ってもらえる存在になれたらいいなと思って続けてきました。

 

ライスボール
弘前アクターズスクールからデビューしたお米アイドルのライスボール

青森は、祭りもあるし、食べ物も自然も観光も、どれをとっても宝の山ですが、人口減少が食い止められていない。でもそれは、見せ方や伝え方が下手なだけなんです。青森の魅力をどうしたら伝えていけるか、ひとりでも多くの青森のファンを作ることが、私の使命だと思っています。

 

PROFILE 樋川新一さん

樋川新一

1970年生まれ、樋川自動車 代表取締役、リンゴミュージック 代表取締役。Uターン後、家業の自動車会社を継ぐが、地元の元気のなさに一念発起し、有志と共に地方活性化を目的とした月謝無料の芸能スクール「弘前アクターズスクールプロジェクト」を設立、地方アイドルの先駆けとなる、りんご娘などをプロデュース。

取材・文/内橋明日香 写真提供/リンゴミュージック