王国の危機を救ったお姫様「アミーラ」

── 国内で初めて誕生したスナネコが話題になりましたね。

 

鈴木さん:
アミーラですね。2020年4月に誕生したのですが、産まれてすぐに衰弱状態になってしまい、人工保育に切り替えて一命をとりとめました。動画を公開したところ、小さくてかよわい姿が多くの方の目にとまり、たくさんの方に成長を見守っていただきました。

 

アミーラという名前も一般公募をして、1万2000通以上もの応募の中から選びました。アラビア語で「お姫様」という意味です。

 

「お姫様」と名付けられたアミーラ
「お姫様」と名付けられたアミーラ

ちょうどコロナ禍で、みなさんがストレスと不安を抱えている時期だったこともあり、たくましく美しく成長していく姿が「心の支えになっています」というお声をたくさんいただきました。

 

そのお声が、現場の飼育スタッフの支えにもなりました。

 

2020年のGWに長期閉園を余儀なくされ、収入が半分以下に落ち込んでしまったので、クラウドファンディングに挑戦したのですが、その際はアミーラに全面的に表に出てもらいました。

 

アミーラは、みなさんとともに苦境を乗り越えた王国の象徴的な存在になってくれたと思います。

 

── 現在、アミーラはどうしているのですか。

 

鈴木さん:
アミーラは2022年4月に、「埼玉県こども動物自然公園」に引っ越しました。アミーラの姉妹にあたるバディーヤ、マシュリク、サディーカも、それぞれほかの動物園に移っています。

 

動物園はただ動物を展示するだけでなく、動物園の責務である「種の保存」を目的とした繁殖にも挑戦しています。

 

特にスナネコのような希少動物は、種の保全のために動物園同士で連携して繁殖を進めたり、知見を共有したりする必要があります。

 

首都圏にはアミーラのファンの方も多いので、埼玉でもアミーラはきっと人気者でいてくれていると思います。いつかアミーラが母親になる日が来るのが楽しみですね。

 

── 今年も、スナネコの赤ちゃんが産まれたそうですね。

 

鈴木さん:
そうなんです。2022年2月2日に、3頭の赤ちゃんが産まれました。アミーラと同じように、名前は一般公募をして決まりました。オスのショジャー(アラビア語で「勇敢」)とアルド(同「大地」)、メスのナジュム(同「星」)です。

 

じゃれあう子ネコたちもかわいいのですが、母親のジャミールの渋~い表情もなんともいえません(笑)。王国では、父親のシャリフと合わせて、現在5頭のスナネコを公開しています。家ネコとはまた違う、ワイルドなかわいさを体感していただきたいですね。鳴き声も「ニャー」ではなく、「シャーッ!」という感じです。

 

スナネコとマヌルネコの人気はダントツですが、王国にはほかにもレッサーパンダやハシビロコウなどの人気者がたくさんいます。2022年3月には、3年ぶりにカピバラの赤ちゃんも誕生しました。ぜひ人気者たちに会いに来てください。

 

PROFILE 鈴木和也さん

那須どうぶつ王国総支配人。那須の自然に魅せられて東京から移住。那須どうぶつ王国の開園に携わり、現在は総支配人を務める。クリエイターの富永省吾さんとともに、「マヌルネコのうた」「スナネコのうた」を制作。

 

取材・文/林優子 写真提供/那須どうぶつ王国