不妊治療を5年、妊活ベースの生活を3年
── 不妊治療は5年間されたそうですね。
ねこくらさん:
夫は10歳年上でしたし、私も30歳を超えていたので、結婚してほどなくクリニックに通いました。タイミング療法、人工授精、顕微授精と、ひと通りチャレンジしました。
かなりお金を使いましたし、体にも負担がかかって辛くなり、35歳でいったんストップしたんです。
とはいえ、完全に諦めたわけでなく、38歳くらいまでなんとなく妊活を意識した生活をしていました。
── 30歳から38歳まで、実質8年間妊娠を目標に過ごされたんですね。
ねこくらさん:
そうなりますね。
その間、気分転換にパン教室に通ったりしたんですが、パンが美味しくて太りましたね…(笑)。
子どもがいなくても、他人の子どもを可愛がったり、尊い猫との暮らしを大事にするのもいいかな…でもお母さんになりたいなぁって、ずっとぐるぐるしていました。
でもある日、ふと「私って本当に子どもが欲しいのかな?」って疑問がわいたんです。
── と、いいますと…?
ねこくらさん:
もちろん子どもが欲しい気持ちに嘘はありませんでしたが、「それってなぜなんだろう…」と自問自答を繰り返した結果、「母親」という存在になりたかったのかもしれないなと思うようになりました。
世間的な役割ではなく「なりたい自分」を目標に
── 妊活をするなかで、ご自身の気持ちに変化があったということでしょうか。
ねこくらさん:
役者にもバリバリのキャリアウーマンにもなれなかったけれど、今度こそなりたい自分になれると思って目指したのが、「子どもを産んでいいお母さんになること」でした。
堂々と胸を張れる「役割」みたいなものが、ずっと欲しかったのだと思います。それによって自信が持てるのでは、世間から認められるんじゃないか、と。
── 8年の間に「お母さん以外の役割」に気持ちが向くことはなかったですか?
ねこくらさん:
それまで「結婚したら次は出産」というのが普通だと思っていました。だからレールから外れることが不安だったし、それ以外の人生を歩むことに気持ちは向きませんでした。
でも40歳を目前にして、妊活が足かせになって、いろんなことに踏み出せない、人生が進まないことに、もどかしさも感じていました。
「妊活は中断する」「40歳になってまだ子どもを欲しい気持ちがあったら、もう一度顕微受精をする」と決めたら、心がラクになり、ようやく執着を手放すことができました。
── そこでパートに出られますが、世間はコロナ禍。派遣切りを経験されます。
ねこくらさん:
専業主婦が一念発起してパートに出たのに、結局自宅待機の生活になりました。
でもそれが、自分と向き合うきっかけになったんです。
世間的にわかりやすい役割は与えられず、何者にもなれなかった。そんな私が、今本当にやりたいことは何だろうと真剣に考えました。
そのときに「そういえば私、本当はずっと痩せた自分の姿を見てみたかった!」と思ったんです。
実は、万年ダイエッターではあったんです。でも挫折してばかり。
妊娠も雇用も自分の努力では叶わないことを知ったからこそ、自分の努力でダイエットは成功させたい。
「今よりも自信が持てる自分になって、40代を迎えたい」
この気持ちが、私を本気にさせました。
PROFILE ねこくらりえさん
夫と猫と暮らす40歳の主婦。38歳で一念発起し、食事の見直しと宅トレでマイナス25㎏のダイエットに成功。フォロワー11.5万人のダイエット系インスタグラマーとして、ダイエットや健康的な食生活の情報などを発信している。
文/西尾英子 写真提供/ねこくらりえ