「ちちのうた」が文章で見せる”映え”の世界

ちちのうたさんは、何気ない瞬間も含めて、日常のなかで起きる素敵なできごとを文章として切り取って投稿しています。
たとえば、息子さんが大好物のチーズを冷蔵庫から取ってくる、というシーンからも、次のような名作が生まれます。

冷蔵庫から大好きなチーズを三つも取った息子に「一つで足りるでしょ」と父が必死の説得を試みるもどうしても聞いてくれず、しかたなく三つとも持たせてあげると、「ママの」「パパの」と一つずつ渡してきた。きみの優勝。 

何気ない一瞬、ささやかな幸せの瞬間ですが、その瞬間を写真に納めるのも難しく、かといって何十年も記憶しておくことも大変。

 

「ちちのうた」を通して、こういったちいさな家族の思い出が風化することなく残り続けるというのは、とても素敵ですよね。

 

ちちのうたさんは現在したためている漫文の数々を、「いやがるかもしれませんが、いつか息子に読んでもらえたらと思っています。そして年老いたときに、妻と二人で読みかえせたらとも思っています」と語ってくれました。

 

綺麗な色合い、美しい風景、“映え”にはさまざまなものがあります。しかし自身が心に描いた幸せな情景もまた、素敵な“映え”のひとつなのではないでしょうか? 

 

取材・文/可児純奈