家庭でも「きちんと分担」と言いがちだった
── その考え方は仕事に対してだけですか?
吉沢さん:
仕事以外でも「こうあるべき」と決め、割と真面目に考えすぎるところがあります。
家事なら夫婦でしっかり分担したいと思うタイプでした。犬の散歩をどちらかに任せるのは良くない、比重が偏るのが良くないと考えるし、例えば、洗濯物が溜まっていたら、自分が仕事で忙しいときには「どうしてやってくれないんだろう」と思ってしまうところがありました。
でも、人にはそれぞれペースがある、それは夫婦にも言えること。気づいた人がやればいいし、気づいた回数が多くなれば、自然に担当する回数も増えると考えられるようになってから、自分の気づかないところで、妻がやってくれていたことが多いことに気づけるようになりました。
「とにかくちゃんとしたい」「きちんと分担」と言ってしまいがちで、自分にも人にも厳しいところがありました。少し意識的に「ま、いいんじゃない?」「そういうこともあるんじゃない?」と思えるようシフトした部分はあります。
肩の力が抜けてたどり着いた境地
── シフトしたきっかけはあるのでしょうか?
吉沢さん:
コロナ禍は大きな要因のひとつだったと思います。人のいろいろな面に気づくことができました。
知っている人の知らなかった一面を良くも悪くも知ることができたかもしれませんね。ちょうど男性の厄年のタイミングがあけて肩の力が抜ける時期と重なったのかもしれません。その時期に殺陣の先生と出会えてよかったです。
──トンネルを抜けて、今、どんな景色が見えていますか?
吉沢さん:
雨が降っていることもたまにあるけれど、ずっと暗い状態ではないと感じています。
30代でぐちゃぐちゃ悩んだ結果、今の状態に辿り着けたのであれば、あの時期にも意味はあったのだと思えます。
今の自分は、頑張りすぎていないし、すごくリラックスできている状態で、楽になった気がします。40代という数字がそうさせているのかは分かりませんが…。
晴れの日もあれば、曇りの日も雨の日もある。当たり前のことだけど、そんな風に考えられるようになりました。
PROFILE 吉沢悠さん
俳優。1978年生まれ、東京都出身。1998年、TBSドラマ「青の時代」で俳優デビュー。以降、ドラマに映画、舞台などで活躍。初主演作はドラマ「動物のお医者さん」。2022年出演作はドラマ「私のエレガンス」、「競争の番人」、映画『幻の蛍』など。
取材・文/タナカシノブ ヘアメイク/髙取篤史 スタイリスト/大迫靖秀