別れ際の新幹線を追っかけて走る彼の姿を見て…
夫が情熱的なタイプだと話すケイコさん(38歳、仮名=以下同)。2年前に結婚したのですが、彼女が東京在住、彼が大阪在住の「遠距離婚」です。
「お互いに仕事が忙しくて、会えるのは月に1、2回。私が大阪に行って帰るときの別れ際、彼はいつも新幹線の走行に合わせて走って追ってくるんです」
“危ないから走らないで”と言っていたのですが、彼は「別れるのが寂しくてたまらない、また会えない日々が続くのがつらすぎる」と。
自分の気持ちをぶつけるかのように、別れ際の走り方がだんだん激しくなってきたといいます。
「そして数か月前、いつものように走って新幹線を追いかけてきたんです。私が東京に戻ってから彼に連絡をしてみると、『今、病院』って。
走ったのはいいけど、途中で転んで右足首を骨折したそう。翌日、私は休みをとって大阪へ。
彼は7歳年上で40代半ばですよ。“いいかげん年を考えて”と、言ってやりました(笑)」
あきれながらも、彼の気持ちを考えると「文句は言えません。私も気持ちは彼と同じ。だけど、それを表現するかどうかだけの違いですから」とケイコさんは笑います。
「最近は走らなくなりました。そして彼の転勤が決まったので、もうすぐ都内で同居できる見通しもたちました。
結婚して初めての同居生活。彼にはケガをしない程度の激しい愛情表現を、これからも期待しているところです!」
終始ニコニコしながら、幸せそうなケイコさんの口ぶり。ドン引きされることがあっても、愛情表現がうれしい場合もあります。サプライズは、程度なのかセンスなのか、好みがわかれるところかもしれません。
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里
※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。