「親が忙しかったので“家族”はしてなかった」と子ども時代を語る白鳥久美子さん。出産から約1年、母となった白鳥さんは、どのように「家族」に対して向き合っているのでしょうか。芸人として活躍しながら「保育士」の資格を取得。お話を聞きました。
妊活中に保育士の資格を取得した訳
── 出産、育休をとる中で、お仕事が一度止まることに不安はありませんでしたか?
白鳥さん:
ありました。出産して、仕事が変わらなかったと言ったら嘘になりますし、なくなっちゃった仕事もいっぱいあったので、このままだと大変になるな、と。それでバイトを探したり、資格を取ろうかな、とずっと考えてましたね。
── それで保育士の資格を?
白鳥さん:
収入がなくなったときの保険でもありましたし、妊活中だったのでもし妊娠できなかったときにどうしようかな、と。でも、保育士の資格を取って、一生子どもと関わっていれば幸せだな、と思ったんです。
── それが妊活の間でもひとつの支えになったのでしょうか。
白鳥さん:
子どもは授かりものなので。できなかったらできなかったでしょうがないや、みたいな。ただ、子どもと遊びたいな、というのはあったんです。小さい子と関わっていくなら保育士さんがいいな、と思って。そっちのほうが、私は希望が持てたんですよね。
子ども、子ども!妊活、妊活!だけになると気が狂いそうになるんです。だから、逃げ道があったほうが、私は気楽でよかったですね。
「めんどくせ!」と思うときもあるけれど
── 以前、インタビューで「ひとりでも生きていけると思っていた」とおっしゃっていましたが、家族が増えて、価値観が変わってきたことはありますか?
白鳥さん:
ひとりのときはいつ死んでもいいよ、みたいに思っていたんです。でも、家族がいるとそうも言ってられない。ちゃんとしなきゃな、という責任があるな、と思いました。
プレッシャーでもあるけど、自分のやりがいにもなる。めんどくせ!と思うときもあるんですけど、母親とか、妻という役割に救われている部分も絶対あるから。そこはストレスでもあり、楽しいところでもあるのかな、と思います。
── 家族への概念も変わったところはありますか?
白鳥さん:
私は親が忙しかったのもあって、「家族」はしてなかったんですよ。親も好きな仕事をしているし、子も好きなことをしているし。でも、家族でやらなきゃいけないときは、家族でやる。その延長線上にいる感じがします。
いろんな、自分たちなりの家族の形を見つければいいんじゃないかな、と思ったりしますけどね。そもそも、あんまり家族という形にはこだわりがなくて、なるようになったものを家族と呼ぼう、という感じだったんです。
── 「家族」という形に縛られなくてもいいんだ、という意見があると少し気が楽になる人もいるかと思います。
白鳥さん:
嫌ですよね、お父さんとお母さんと、子どもがいて「家族」だ、なんて言われたら。
私自身、今まで、いろんな人たちと一緒に過ごして、それがすごく楽しかったんです。子どもにも、こんな人もいるし、あんな人もいるよ、っていろんな世界が見せられたらいいんじゃないんですかね。
お父さんとお母さんだけだったら、子どもも息が詰まりますよ、やだよ(笑)。
── 白鳥さんは以前のインタビューでも、たくさんの人に触れて育ってほしい、っておっしゃっていらっしゃいますよね。
白鳥さん:
今もそう思いますね。保育園に行って、友だちや先生と遊んでいる姿を見ると、いろんな出会いがあったほうが本人のなかで経験値が増えてるのも見えたんです。親だけじゃ伝え切れないもの、他人からしか学べないものってあると思うので。
いろんな人に会って、世の中はいろんな人があふれてんだぞ、なめんじゃねぇぞ、っていうことを早めに知ってもらいたいですね。
── 仕事場にも連れていかれたことがあるとお聞きしました。
白鳥さん:
2、3回だけですけど、そのときはマネージャーさんが見てくれていました。ギャン泣きでしたけど。
電車で行きましたが、周りの人の目も気になりますし、仕事場で嫌がられないかとか心配だったんですけど、相方含めてみなさんウェルカムでホッとしました。
世の中って優しいんだな、っていうのもそのとき思ったので、子どもがいると、その周りの様子も見えて、勉強になるな、と思いましたね。
PROFILE 白鳥久美子さん
しらとりくみこ。1981年生まれ。2008年に川村エミコとお笑いコンビ・たんぽぽを結成。朝の連続ドラマ「梅ちゃん先生」を始め、女優としても活躍している。2018年、お笑い芸人のチェリー吉武と結婚。2021年に第一子を出産。
取材・文/ふくだりょうこ 撮影/坂脇卓也