まさか自分が小説を書くとは…
「『誕生日の雨傘』を最初に発表することになった『オール讀物』に、エッセーを依頼されて2本書きましたが、そのときも小説を書くことは考えていませんでした。
その後、短編小説を書かないかと依頼され、驚いて尻込みしてしまったほどです。
江國香織さんの小説は愛読していましたが、まさか自分が小説を書くとは考えたこともなくて…。
誰だって最初は戸惑うものと説得されたうえ、女友達をテーマに書くことを勧められ、書き始めることになりました」
編集者がそんな柊子さんの“文才”に目をつけたきっかけは、10代から手がけていた作詞だったそうです。
アイドルとして活動して作詞も
「私は一時期、同じ事務所のアイドルグループ(JK21)に、在籍していたこともありまして(笑)。
アイドルとしての活動は1年くらいでしたがその後、アイドルソングの作詞も続けていました。
作詞と小説はもちろん別物ですけれど、私は曲先行で歌詞を考えるタイプです。何度も曲を聞いてストーリーを作っていく。
小説はすべてを自分で考えなくてはいけないので、書き始めるまでに時間はかかりました。
けれど、自分と向き合いストーリーを考えたうえで書いていくという意味では、アイドルの作詞も小説も同じベクトルだと思っています」
テレビや映画、舞台など“本業”の女優としての活動とも比較してこう語ります。
「お芝居は、相手がいるものなので、自分の喜怒哀楽をぶつければ、何かしらの反応が返ってきて、また新たな感情が引き出されたりします。
でも、小説を書いているときの相手というのは、パソコンの画面なので…。
追い込んで書いているときやネガティブな状況のときは、心の持っていきようがないときもあります」
すごくお腹がすく
一方、エネルギーの消費量は同じくらいだそうです。
「小説を書くときは、朝の9時から夜の6時までと決めていて、食べると眠くなるので少食にしているのですが、すごくお腹がすきます!
座って手を動かすだけですが、書くことはすごく体力を使うのだなと実感しました。座っている時間がほとんどなのに、全身を使うお芝居と同じくらい」
「今回の作品が映像化されたら…」と控えめに話す柊子さん。今後については…。
「女優の仕事とバランスを取りながら、今日の天気のような曇り空でも一筋の光が差し込むような作品を書いていきたいと思います」
取材の日は、朝からあいにくの空模様でしたが、柊子さんの話が終わると晴れ間がのぞいてきました。
PROFILE 柊子さん
しゅうこ。1991年奈良県生まれ。2005年に舞台、'07年に映画、'08年にドラマデビュー。同年、ガールズユニットのメンバーに。映画『結婚』などにも出演。この8月に『誕生日の雨傘』で作家デビュー。
取材・文・撮影/CHANTO WEB NEWS 衣装/GRAYISH