スナックが提供できる価値は何?ママの模索は続く

2022年4月から、せつこママから受け継いだお店を『スナック水中』としてオープンした坂根さん。

 

アルバイトではなく、ママとしてカウンターに立ってみて、改めて気づいたスナックの魅力があります。

 

「スナックではお客様と従業員の関係が濃厚です。チェーン店のように誰に対しても同じサービスは求められていません。

 

 “自分にはこういうサービスをしてほしい”と一人ひとりのお客様がそれぞれこだわりを持たれています。

 

求められているものを把握して提供することで、お客様とお店の信頼関係が生まれる。それが“スナックが提供している価値”の核心だと思っています。

 

もちろん、お客様のご希望を見誤り、失敗することもあります。そうすると、お見送りの際に“あれはどうなの?”とお叱りを受けることも。

 

そうした経験は一つひとつスタッフと共有して、次回来店されたときに満足していただけるようにしています」

 

店に来てくれる人から「このお店、本当に好き」と思ってもらうにはどうしたらいいか、坂根さんは試行錯誤の日々です。

 

「“スナックは敷居が高い”イメージがあると思います。でも、もっと若い人や女性にも気軽に来てもらいたくて、SNSも積極的に活用しています。

 

また、健全さや清潔感を伝えるためにも、店舗にガラス張りの外枠を付け、店内の様子がわかるように改装しました。

 

ワンプレートの食事も用意しています。忙しいときや、体調がすぐれないときに、ちょっとお店に寄って、バランスのいい食事とお酒を手軽に楽しんでもらえたらと思っています」

 

一方で、実は垣根が低ければいいわけでもない、とも考えているそう。店の雰囲気を無視して大騒ぎする人がたくさん来て嬉しいかというと、それは違うといいます。

 

「やっぱり、スナック水中に居心地のよさを感じ、大切にしてくれるお客様を大切にしたいです。

 

店側としても、想定しているテンポやリズムがあるので、その一線を越えて絡んでくる方などがいれば、こちらから“お帰りください”とお願いする場合もあります」

 

まずはスナック水中を気に入ってくれそうな人に、店の存在に気づいてもらうことが課題のひとつ。そのために、スナックの“わかりにくさ”を明確にしたそうです。

 

「たとえば、料金システムやカラオケは歌うべきなのかといった、暗黙のルールになっている部分ですね。

 

一緒に働くスタッフはスナックが初めての人がほとんどなので、何がわかりにくい?と聞いています」

 

20代の坂根さんがママになったことで、来店する人の年齢層や性別も変わりました。平均年齢が20~30代の日もあれば、女性が多い日もあります。

 

「スナック初心者の若い方は大歓迎です。一方で、常連になってくださるのはミドル世代が多いですし、すなっく・せつこ時代からの60代以上のお客様にも居心地よく過ごしてもらいたい。とにかく目の前のお客様に真剣に向き合う毎日です」