スラムの子どもたちが通う学校のアートクラスを担当する伊藤さん(写真中央・奥)

夫の海外赴任に同行し、インドネシア、ケニア、エジプトで暮らした経験を持つ伊藤美穂さん(仮名・53歳)。駐在国で興味のあることは積極的に挑戦し、楽しさを見つけてきました。海外で暮らすことで改めて気づいた日本の魅力。現地の子どもたちから学んだことなどについて話を聞きました。

知らない国でも一歩踏み出せば人間関係は築ける

約13年間、夫の海外赴任に帯同してきた伊藤さん。駐在で暮らす人のなかには、少数ではあるものの、現地の文化や習慣になじめず、家に閉じこもったり、帰国したりする人もいました。

 

伊藤さんはとまどうことこそありましたが、どの国でも趣味のバレエレッスンは続けました。

 

スラムの学校でアートクラスを担当するなど、興味や関心のあることにも挑戦し、自分の世界を広げていきました。

 

その積極性を身につけたのは、娘たちの存在が大きかったそうです。

 

「夫の仕事の都合で海外に行く場合、自分の住みたい国を選べるわけではありません。もし私が毎日ふさぎこんで、暗い顔をしていたら娘たちも不安になるでしょう。

 

駐在する国が嫌になり、住み慣れた日本に帰りたいと思う可能性があります。でも、せっかく縁があった国なので、愛着をもってほしかったんです。

 

まずは、私が快適に暮らし、笑顔で過ごすことで娘たちも安心して楽しく暮らせるだろうと思いました」

 

とはいえ、駐在した国は情勢が不安定な場合が多く、ひとりで街を出歩き、新しい趣味探しや気楽な観光をするのは困難でした。

 

「もともと好きだったバレエだけは、どの国に行っても習える場所を探して続けました。

 

最初は音楽学校やプロ専用のレッスン、アメリカンクラブなど、思うような教室が見つかりませんでしたが、だんだん私の技術力に合う先生などを紹介してくれるようになりました。

 

知らない国では求める情報を見つけるのが難しいです。でも、知りたいことをためらわずに聞いていけば、過ごしやすい環境がととのっていくと感じました。

 

知っている人が誰もいない国でも、自分から一歩踏み出すことで新しい人間関係を築けると思います」