コレクター魂をくすぐる無料のマンホールカード

── 「マンホールカード」とはどういうものですか?

 

村仲さん:
デザインマンホールをカード型のパンフレットにしたものです。全国にマンホール蓋のファンが増えていき、この人気を下水道事業の認知にもっと繋がらないかと考えて生まれたのがマンホールカードです。全国のダムの写真とデータを記載した、「ダムカード」からヒントを得ました。

 

2016年に第1弾のマンホールカードを発行したところ瞬く間に話題に。マンホールカードは観光案内所や道の駅、下水道関連施設などで無料配布されていて、一人1枚まで手に入れることができます。

「鉄腕アトム」や「初音ミク」のマンホールカードも
「鉄腕アトム」や「初音ミク」のマンホールカードも

コロナ禍で配布を控えた時期もありましたが、基本的には4月・8月・12月の年に3回、毎回50〜60種類のカードを全国で配布しています。現時点で、第16弾まであり、837種607自治体のマンホールカードが出ています。

 

今、第17弾を制作中で、その中には、今話題の「ガンダムマンホール」のカードもあります。今年の8月に行われる「下水道展」でも一部のカードを先行配布する予定ですが、『機動戦士ガンダム』の人気は半端ないので、一斉配布が始まると、あっという間になくなるんじゃないかなと思っています。

小田原市に設置されたガンダムマンホール(c)創通・サンライズ
小田原市に設置されたガンダムマンホール(c)創通・サンライズ

 

北海道の豊富町に設置された「ドムマンホール」(c)創通・サンライズ
北海道の豊富町に設置された「ドムマンホール」(c)創通・サンライズ

── 「ガンダムマンホール」のカード人気はやっぱりダントツですか?

 

村仲さん:
そうですね。今まで出ているマンホールカードの中でも一番人気があると思います。2019年、稲城市の「メカニックデザイナー大河原邦男プロジェクト」の一環として、初めてガンダムのマンホールが設置され、カードが配付されたとき、初日で数千枚を配ったと聞いています。マンホールカードは1ロット2000枚で印刷するのですが、マニアの方はロットナンバーも気にされるので、なんとかロットナンバー1の2000枚以内のものを手に入れようと配布開始の数時間前から多くの方が並ばれていたそうです。

過去に配られた『機動戦士ガンダム』のマンホールカード(c)創通・サンライズ
過去に配られた『機動戦士ガンダム』のマンホールカード(c)創通・サンライズ

ガンダムの他にも、静岡市の「ちびまる子ちゃん」、千葉市の「初音ミク」、沼津市の「ラブライブ!サンシャイン」、佐賀市の「ロマンシングサガ」、佐久市の「北斗の拳」も人気でしたね。あと、新宿区の「ゴジラ」、千代田区の「鉄腕アトム」、世田谷区の「ウルトラマン」も…挙げたらキリがないですね(笑)。

「ちびまる子ちゃん」のカード配布の時は大勢の人々が列を成した(c)円谷プロ
「ちびまる子ちゃん」のカード配布の時は大勢の人々が列を成した(c)円谷プロ

── 「マンホールカード」のコンプリートを目指す人も多そうです。

 

村仲さん:
それがなかなかコンプリートが難しいのです。先ほどお伝えしたように一箇所で1種類しか配布していませんし、一人1枚までしか手に入れることはできません。せっかくコンプリートしたと思ってもすぐに新しいカードが出るし、しかも配られるのは全国です。

 

年に何回も旅行に行くのはお金もかかりますし、すべて集めるのは至難の技です。それがまたコレクター魂をくすぐるのかもしれませんが、私が知る限りでは日本全国で4名ほどコンプリートしている人がいると聞いています。

毎年夏に開催される「下水道展」
毎年夏に開催される「下水道展」

「マンホールサミット」や「下水道展」でまとめて配ることもありますが、それでもコンプリートは難しい。なので、すべてをコンプリートするというよりも、カードに表示されている「ピクトグラム」縛りだったり、カードのベースの色でどこのエリアのものかわかるようになっているので、「カードの色」縛りでコンプリしている人もいるようです。

 

── レアなカードはあるんですか?

 

村仲さん:
今は発行前にかなり細かく確認していますが、最初の頃はカードにある「位置座標」が間違ったものがあり、それはレアカードになっています。あとは版権の関係で今はもうマンホール蓋自体がなく、カードも1ロット分しか発行されなかったものがあって、そういうものはネット上では高値で売られているようです。

マンホールサミットでのマンホールカード展示の様子
マンホールサミットでのマンホールカード展示の様子

しかし、ここが難しいところで、カードが人気になるのはいいのですが困ったことも。レアカードもですが、特に初回カードはフリマサイトなどに出品されていることも多く、今、転売が問題になっています。また、配布は1人1枚と決まっているのですが、転売目的で、何枚も受け取りに来る人もいます。注意はしているのですが、もらっていないと言われれば、配布している方も強くは出られず、対応に困っておられるようです。

 

GKPは国土交通省下水道部や地方公共団体、下水道関連企業、マスコミなどのボランティアメンバーで構成された組織です。カードはあくまでも下水道事業のPRのために始めたものであり、もともと無料で配っているということもあり、非常に残念に思っています。節度を守ってカードを集めてもらえると嬉しいですね。

取材・文/酒井明子