え?こんな仕事も?と思いながら

仕事が急激に落ち着いた時期もあったと語る西田さん。

── ところで、現在は日本を拠点に活動されています。改めて、10代の頃からお仕事をされていて、お仕事に対する価値観、取り組み方は変わりましたか?

 

西田さん:

やりたいことは、ほとんどできない。そもそも、仕事って「やりたいことが、ほとんどできない」ものだと思うんです。

 

──  「諦める」ということですか?

 

西田さん:

いえいえ。と言うより、「自分はこれが好き!」「これは苦手だから無理!」ってあまり固定観念を持たないようにしてるんです。いただいた仕事を一生懸命やって、次に繋げることしか考えていないんでしょうね。

 

どの仕事もそうかもしれないんですが、「意志が強すぎると、思うようにならないもの」って言うような気もするんです。「えっ、こんな仕事?」と思いながら取り組んだ仕事も、きちんと向き合えば、時間が経ってから「昔、西田さんと仕事をしたから」って招いていただけることもあったりします。

 

自分のイメージだけで決めつけないでいたからこそ、ここまで続けられた部分もあると思います。それに、やっぱり人との縁が大事ですよね。

 

── そう思えたきっかけはあったんですか?

 

西田さん:

20代のときに、ミュージカルでフラメンコを踊るお話をいただいたんです。フラメンコなんて絶対に踊れないし、自分とは違うような気がしたんですよ。でも、声をかけてくださったプロデューサーの方がぜひと。

 

「そんなふうに声をかけてくださるんだったら」と思ってやってみたら、結果的にいい評価をしていただけたんですよね。自分がやりたいと思ってることと、人からの評価は意外と違っているんだな、って。

 

苦しくて嫌だな、と思うことを一生懸命やった結果、良い思い出になったりする経験をちょっとずつするようになって。自分が思ってるかっこいい自分にとらわれなくてもいいかなって20代後半に分かり始めました。

 

PROFILE 西田ひかるさん

西田ひかる。1972年生まれ。女優、歌手。1988年に『フィフティーン』でレコードデビュー。以後、歌手活動のほか、多くのテレビドラマ、ミュージカル、舞台に出演。代表曲に『ときめいて』、『人生変えちゃう夏かもね』」、『pure』、『空色』などがある。2002年に結婚し、現在は2児の母。西田ひかるマキシシングル「Just Lovin'」、山野楽器 銀座本店ほかで発売中。インスタも毎日更新中。

取材・文/ふくだりょうこ 撮影/井野敦晴