ジメジメした湿気がこもり、あちこちがカビやすくなる梅雨どき。なかでも栄養と水分が豊富なキッチンは、こまめな手入れや除菌が必要になります。
気温が上がるこの時季は食中毒のリスクも高くなるので、キッチンの細菌は「つけない」「増やさない」「やっつける」が基本原則。住生活ジャーナリストの藤原千秋さんに、キッチンの正しい除菌法をうかがいました。
「ニオイがする」ということは細菌がいる証拠
── カビやニオイが気になる梅雨の時季。キッチンの除菌で気をつけるポイントはなんでしょうか?
藤原さん:
コロナ禍で、以前よりも「除菌」や「殺菌」という言葉が意識されるようになりました。しかし、多くの人が「ウイルス」と「細菌(バクテリア)」と「カビ」とを混同しています。いずれも目には見えない小さなものですが、これらはまったく別のものなんです。
ウイルスは生物の体内に入り込んで増えていくもので、キッチンなどの環境のニオイやカビの原因にはなりません。一方、細菌やカビは「水分」「温度」「エサ(タンパク質、糖質、セルロースなど)」がそろった環境があれば自分だけで増えてしまいます。
6月は気温が上がり、湿度も高くなる時季。栄養が豊富かつ水で濡れている状態が多いキッチンは、細菌やカビが繁殖するには格好の場所なのです。
── 細菌やカビは放っておくとどんどん増殖してしまうのですね。キッチンでとくに細菌やカビが繁殖しやすい場所はどこですか?
藤原さん:
細菌が増えるものの代表例は台ふきんです。汚れた状態で濡れたままにして置いておくと、雑巾臭くなりますよね。この「雑巾臭い」というニオイこそ、細菌が発生しているという証なんです。
生活する環境にいる細菌は「雑菌」と呼ぶくらい、たくさんの菌が入り混じっています。また「バイキン」という言葉がありますが、漢字で書くと「黴菌」、つまり「黴(カビ)と(細)菌」。どちらも同じような環境を好み、放置すると競うように増殖してしまうのです。
なかでも、カビのほうは、ジワジワと増えるもの。つまり目に見えてカビが生えているとわかる状態というのは“かなり進んでしまった状況”です。特別な除菌対策を考えるよりも、「ふだんやっていることが細菌やカビを増やしてしまっているのかも?」と、習慣を一度見直してみるといいでしょう。
── つまり、細菌を含んだ台ふきんでテーブルを拭くと、細菌を塗り広げてしまうことになる…ということでしょうか?
藤原さん:
そのとおりです。汚れがついたまま、濡れた状態で放置することが多い台ふきんは、細菌の培養庫のようなもの。洗濯や漂白や消毒など、こまめな手入れができない人は、細菌を広げてしまうだけなので、台ふきんは使わないほうがベターです。
おすすめは使い捨ての紙のダスターや、キッチンペーパー。シンクやカウンターに消毒用エタノール(食品アルコール除菌スプレーなど)を吹きかけ、紙で拭き取って、清掃と除菌を同時に行うのがいいと思います。
注意したいのは、消毒用エタノール(アルコール)は引火しやすいという点。コンロの火がついている横で掃除をすることはもちろん、掃除の直後に火をつけることは “絶対に!” しないでくださいね。