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沖縄の「介護福祉士」で「3児のシンママ」が産後うつを克服してキックの女王になるまで

仕事

2022.01.11

AKARI選手(右)との対戦でキックを放つerikaさん(c)RISEAKARI選手(右)との対戦でキックを放つerikaさん(c)RISE

沖縄県の特別養護老人ホームで介護の仕事をしながら、3人の子どもを育て、プロのキックボクサーとして活躍するerika(名前の後にハートマーク、以下同)さん(31)。

 

得意の左ストレートが空を切っても、相手のキックをもろに受けても、決して退かない闘争心は、どこからわいてくるのでしょうか ──

テレビ電話で“ママ、おめでとう!”

「昨晩は、アドレナリンが出っ放しで1時間も眠れませんでした!」

 

昨年12月12日に、後楽園ホールで開かれた「RISE153」で、女子高校生ファイター・AKARI選手を破った翌朝、取材に応じてくれたerikaさん。

 

「2020年、寺山日葵(ひなた)選手(ミニフライ級王者)に敗れて悔しい思いをしていたので、再戦に向けて今回、勝利できたことはよかったです。

 

子どもたちは沖縄の自宅からの観戦でしたが、テレビ電話で“ママ、おめでとう!”と喜んでくれました」

3人のお子さんたちとerikaさん3人のお子さんたちと

夜勤や減量のときは疲れを無視

現在、ミネルヴァ アトム級(46.26キロ以下)日本チャンピオンのerikaさんは、「3児のヒロイン」というキャッチフレーズをもち、10歳の長女、7歳の長男、6歳の次女を育てるシングルマザーでもあります。

 

タフでハードな日々をどのように送っているのでしょうか?

 

「平日の老人ホームでの仕事は、朝6時半から16時になります。

 

その後、18時半ころまでジムでトレーニングをしてその後、ダッシュで帰り、夕飯の準備などをします。

 

夜勤や減量のときは確かにつらいですが、全身のスイッチをオンにして疲れを無視しています(笑)。

 

きっと早死にしますね…」

erikaさんは、特養ホームで介護福祉士としても働く特養ホームで介護福祉士としても働く

夫とうまくいかず摂食障害と産後うつも

そんな日々でも楽しく充実しているのは、erikaさんが過酷な体験をしてきたからです。

 

「私は生まれも育ちも沖縄で、幼稚園から小学校までは水泳を、中学と高校はバドミントンに打ち込んでいました。

 

高校は県内の体育会系で一番厳しい学校と言われていたので、そこで自分を追い込む力が付いたのかもしれません」

 

高校卒業後は、介護福祉士の資格を取るために専門学校に進学。

 

「卒業後に、現在の特養老人ホームに就職しました。20歳のときに結婚。その後、3人の子どもに恵まれました。

 

しかし、夫との関係がうまくいかなかったこともあり、産後うつや摂食障害を患いました。

 

楽しいはずの子育てが楽しくない。かわいいはずの子どもが、かわいくない…」

 

現在では“体力お化け”の異名を誇るerikaさんが、ここまで追い詰められるとは、よほどのことがあったのでしょう。

 

「友達は大学生になって遊んでいるのに自分は大変な思いをしていると、人生に悲観している時期でしたね。

 

私は身長161センチですが、体重が38キロにまで落ちたこともありました…」

試合前は過酷な減量で体を絞るerika♡さん試合前は過酷な減量で体を絞る

穏やかな気持ちになり視野が広がる

そんなときに、出会ったのがキックボクシングでした。

 

「元々、格闘技が好きだったので、体力づくりのために近所のジムに行くと、キックボクシングの魅力にはまってしまいました。26か27歳のころです。

 

沖縄の試合で東京のプロモーターに声をかけられ、プロを目指すことになり結局、夫とは離婚しました。

 

介護の仕事もキックボクシングも、私がやりたいことを一生懸命する姿を見せれば、子どもたちもわかってくれると思い、現在にいたります」

 

キックボクシングを始めてからerikaさんは、何事もイライラすることがなくなったそうです。

 

「やはり、トレーニングで発散されるのか、穏やかな気持ちになり、視野が広がり、マイペースになりましたね。

 

だから、仕事や家事育児に悩んでいる人は、何とか時間をつくり、軽い運動でもいいのでお勧めしたいですね。

 

慣れるまでは体がつらいと思いますが、ボーっとして嫌なことを考えてしまう時間を、体を動かすことにあてたほうがいいと思います」

判定でAKARI選手を下したerikaさん(c)RISE判定でAKARI選手を下した(c)RISE

キックも介護も子どもすべてが補い合う

ただ、介護職をしながら、格闘技と家事育児を両立させることは、かなり大変なのでは?

 

「私は、キックボクシングも介護の仕事も子どもすべてが好きで、それぞれが補い合っているように思います。

 

介護は、走り回ったり入所者さんを持ち上げたりすることもありますが、それがトレーニングになることもあります。

 

なかには、目を潤ませながら私の活躍を喜んでくれる人もいますよ。

 

私の大変さを理解していて、子どもたちは、ごはんを炊いてくれたり、洗濯機を回してくれたりもします。

 

これだけ充実しているのに、つらいとか大変とか言うつもりはありません」

AKARI選手との試合でのerikaさんAKARI選手との試合で

相手へのリスペクトがあってこそ

どれも「人が好き」だからこそ、続けられるとも話すerikaさん。

 

「自分が一生懸命になれる相手がいることは、幸せなことだと思います。

 

私の職場は、重度の認知症の方が多いですが、そういう人たちと心を通わせられる瞬間があると、癒されることもあります。

 

キックボクシングも相手へのリスペクトなしには成り立たないスポーツです。

 

相手のことを認め、相手が自分のために全力で練習してくれたからこそ、自分が戦うことができるという気持ちで臨んでいます」

昨年、12月12日に行われた「RISE153」のポスターの前でのerikaさん勝利を飾った「RISE153」のポスターの前で

試合中の鬼気迫るerikaさんからは、想像できない優しい気持ちをもちながら、今後はどんな“三足の草鞋(わらじ)”を目指すのでしょうか?

 

「キックボクサーとしては、階級をあげてチャンピオンになり、世界に通用する選手になりたいです。

 

介護福祉士としては、若い人たちが憧れるような職場作りをしたいですね。

 

新型コロナの影響で、介護職は働きにくいイメージができたようなので、それを払しょくしていきたいです。

 

母親としては、子どもが好きなことや目指すことをサポートし続ける親になりたいですね。

 

これらを両立させて、人生で切羽詰まっている人たちに、少しでも勇気を与えられればと思います」

 

PROFILE erikaさん

えりか。1990年、沖縄県生まれ。介護福祉士でキックボクサー。ミネルヴァ アトム級(46.26キロ以下)日本チャンピオン。プロ戦績10 戦9戦1負(2KO)。SHINE沖縄所属。3児の母。

文/CHANTO WEB NEWS   写真/erika

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