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“おもてなし”が会社設立の原点。「食」の夫婦ユニットが語る「暮らすように働く日々」

仕事

2021.08.08

食にまつわるもの作りを広く手がける井上夫婦。妻のモモコさんの「料理好きな夫を持った今のライフスタイルを発信したい」という思いが、夫婦ユニットとしてのスタート地点でした。その後、二人が企画するホームパーティーにはさまざまな年齢、業種の人が集うようになり、次第に仕事へと派生していったそうです。

 

「仕事も暮らしも、楽しむことを第一に考えている」と話してくれた夫婦ユニット・てとてとの、“ワクワク”が詰まった日常について伺いました。

趣味のホームパーティーが事業立ち上げの第一歩に

── 夫婦ユニット名の「てとてと」は、ブログのタイトルが由来だそうですね。

 

モモコさん:

私たちが結婚したのが2016年。結婚前からゴウキさんはプロ顔負けの料理を振る舞ってくれていたし、インテリアにもこだわりを持っていて。私自身、丁寧な暮らしを楽しめるようなライフスタイルを理想としていたので、二人の生活がスタートしたときに、「私たちのライフスタイルを記録してみない?」とブログページの作成を提案しました。

 

そのときにゴウキさんが考えてくれたのが「てとてと」というタイトル。「手と手のつながりを感じながらゆっくり歩くように暮らしを楽しもう」という思いから名づけられました。

 

そのブログでは私たちの日常風景以外にも、中古マンションのリノベーションの進捗や、友人を招いてのホームパーティの様子を載せていました。

 

── モモコさんはひとり暮らしの頃からホームパーティをよく開催していたそうですね。

 

モモコさん:

来てくれる人たちがどうやったら笑顔になってくれるか、特別な時間を過ごしてもらえるかを考えるのが好き…人を喜ばせるのが好きなんです。当時は私もゴウキさんも会社勤めだったので、休日や仕事帰りを利用して定期的にホームパーティを企画していたら、いろいろな人から「参加したい」という声をいただいて。気づけば「年100回」くらいのペースで開催していましたね(笑)。

ゴウキさん:

回数が増えてきたとき、改めて「てとてと食堂」という名前をつけて、会費制のコミュニティスペースのような位置付けとしました。僕が料理を作るのは単純に「誰かに喜んでほしい」からという趣味の延長。「僕の料理を食べにきて」というスタンスではなく、「コミュニティの場を提供するから楽しんで!おまけで料理がつくよ」くらいの気概でした(笑)。

 

モモコさん:

器にこだわったり、調理器具にこだわったり、私たちも楽しみながら「おもてなし方」を深めていきましたね。利用してくれる方も「ママ友と集まりたい」とか、「ドレスアップしてパーティ気分を味わいたい」など。コミュニケーションを生み出すきっかけのような場所になっていきました。

築39年の中古マンションを大改造したキッチンは、二人のこだわりがたっぷり詰め込まれている

── 二人とも「おもてなしが好き」というところが共通していたんですね。現在はブランディングや商品開発が主な仕事とのことですが…。

 

ゴウキさん:

夫婦ユニットとして、発信や場づくりをしているうちに、食にまつわる商品開発の相談や依頼を受けるようになりました。「それならば会社として設立しよう」と、2017年9月に株式会社TETOTETOを設立したんです。

 

モモコさん:

私たちは日本各地の生産者さんをめぐる旅をライフワークとしていて、その中で出会った農家さんと話をしていくうちに仕事に発展するケースも少なくありません。ゴウキさんは農家さんが抱える課題をITを活用して解決へと導く「できる.agri」というプロジェクトの相談役も請け負っているので、そのコミュニティから新しい出会いに繋がることもありました。

 

例えば、長野県のほうれんそう農家さんとコラボした『野辺山ほうれん草カレーペースト』。農家さんと話をする中で、「ほうれんそうの残渣物が1日1トン出る」ということを聞いたんです。

 

農家さんはそれを当たり前のこととして捉えていたのですが、私たちは「もったいないな」と感じたんです。その残渣物を使ってオリジナルのカレーペーストを作り、「野辺山の自然の中でカレーパーティを開こう」と企画しました。

 

そのパーティで好評を得たので「商品化してみよう」ということに。現在は、私たちが立ち上げたECサイトや、道の駅などで販売しています。

 

ゴウキさん:

こういった商品開発やブランディングは、案件ごとにプロジェクトチームを組んで進めています。声をかけるメンバーは、プロジェクトごとに編成していて、多くがホームパーティで知り合った方たちなんですよ。

ほうれんそうの残渣物を活用して作った「野辺山ほうれん草カレーペースト」(写真中央)

──人の面でも活動の面でも、ホームパーティが二人の活動のベースになっているんですね!ちなみに、お二人の仕事の多くが「レベニューシェア」で請け負っているとのことですが、その理由は?

 

ゴウキさん:

レベニューシェアは、商品が出来上がったタイミングで報酬を支払うのではなく、売り上げに応じて決められた報酬を都度支払うというスキーム。出版物の印税などと同じようなイメージです。

 

僕は前職でも同様のプロジェクトを任されていたのですが、納品までの過程で発注者と受注者の上下関係ができてしまうことに違和感を感じていました。相見積もりをとって「他社は御社より安い値段を提示している」と、値下げ交渉をすることも多く…。クオリティーの高いもの作りをしているのに、そのスキルや労働力を安く買い叩くのは「豊か」とは言えないと感じました。

 

課題を抱えている農家さんは、予算が限られていることもほとんど。レベニューシェアは発注者も受注者も無理なく豊かに仕事ができる手段と言えるのではないでしょうか。

 

──「ほうれんそうペースト」のような商品開発は、フードロス問題にも一役買っていますよね。

 

モモコさん:

そうなんです。他にもパッションフルーツ農家さんの「出荷できなかったけど、いつか何かに使いたい」と冷凍庫で眠っていたパッションフルーツを使ってシロップを商品化したりもしています。生産者は残渣物や出荷未定の野菜や果物を多く抱えています。そういう課題を私たちなりに解消していけたら嬉しいですね。

「働くこと」をストレスにしない暮らしが実現できるのも夫婦ユニットの魅力

 

── お二人の役割分担は決めているのですか?また、夫婦で働くことのメリットはどのようなところにあるのでしょうか。

 

モモコさん:

ゴウキさんがゴールまでの道筋を立てるプロデューサーで、私がゴールまでの調整を行うディレクターといったところでしょうか。私は前職ではイラストレーターやデザイナーとして仕事をしていたので、その経験を生かしてプロジェクトに参加しているクリエイターさんへの相談や調整をすることも多いです。

 

夫婦で働くことのメリットは、「時間を共有できること」。出張が旅行になるし、打ち合わせがデートになる(笑)。例えば日本橋で打ち合わせがある時は、「打ち合わせの後、何食べよう」とワクワクしますね。

 

結婚当初は距離が近い分、妥協できない部分もあって、そこをうまくすり合わせするのが難しかったんですが、結婚5年目でようやく「ちょうど良い距離感」が掴めてきた気がします。喧嘩の回数もだいぶ減りました(笑)。

 

ゴウキさん:

夫婦で働くことが「人生を豊かにしてくれる」と感じています。二人で動くと仕事も仕事じゃなくなる。暮らしの一部になるんです。

 

ひと昔前は暮らしと仕事が一体化していたはずなのに、会社が出来上がって、暮らしと仕事が分離したら、「働くこと」がストレスになるようになってしまった。

 

「休みの日を待ち遠しく働く」って、ちょっと変じゃないですか?どうせなら仕事も、暮らしも楽しくありたい。家族と働くこと、夫婦で働くことで、働くことと暮らすことが溶け合って、毎日が豊かに過ごせるような気がしています。

 

── 今後は山梨にも拠点を作るそうですね。

 

ゴウキさん:

山梨にクリエイティブキッチンを作る予定でいます。山梨の生産者の廃棄物、残渣物を活用した商品開発などにも力を注ぎたいです。これまでは「てとてと」といえば、僕ら「夫婦」をイメージされてきましたが、今後は、僕らの仕事から生まれた「商品」や「思想」が表に出ていけるような活動をしていく予定です。

 

モモコさん:

ゴウキさんはフルーツブランデー、私は漬物のブランドを各々で立ち上げる準備を進めています。今後はそれぞれの活動に分岐していくこともあるかと思いますが、共通しているのは「好きなことを仕事にする」ということ。今後も胸のうちの「ワクワク」に正直に暮らしていきたいですね。

 

 

おもてなし上手の二人の活動から始まった「てとてと」の事業。人、もの、スキル、経験…全ての点が線となって、二人の豊かな暮らしへと結びついています。「楽しむこと」を大切にする二人の話は、常に生き生きとした好奇心と冒険心に満ちていました。

 

PROFILE

ゴウキさん:大分県出身。食のクリエイティブディレクター、ブランディングプロデューサー。大学では航海術や海洋環境について学び、卒業後は海事鑑定人として働く。その後共創プランナーとして企業の商品開発に携わる。2017年に株式会社TETOTETOを立ち上げる。

 

モモコさん:神奈川県出身。ライフスタイルデザイナー。武蔵野美術大学卒業後、IT系の会社でイラストレーター、UIデザイナーとして働く。2017年の会社設立のタイミングで退職し、夫婦ユニットとしての事業に専念する。

取材・文/佐藤有香 撮影/大童鉄平

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