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「あなたの仕事はいらない」冷たい視線が向けられても起業を諦めなかった訳

仕事

2021.01.31

2021.02.06

2017年、ホテル清掃に特化した「客室清掃コンサルタント」として起業した西山貴代さん。清掃業という注目されづらい職業との出会いと熱意に満ちた関わりのストーリーに迫ります。

 

前回「『清掃=おばちゃんの職業』という概念を変えたある女性の戦い」に続き、2回目となる今回は、起業に至るきっかけから今の仕事へのこだわりや想いについて。コミュニケーションがうまくいかずスタッフにボイコットされた手痛い経験もしたという西山さん。あらゆる“もしも”を想定し、“声なき不満”をすくい上げ続ける──“ホテル清掃愛”にあふれるお仕事ぶりは必見です!

アルバイトながら技能コンクールで優勝!

── 起業しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

 

西山さん:

2016年に藤田観光グループが主催する技能コンクールに出場したことが転機になりました。

 

アルバイトの現場で技能コンクールが開催されることを聞きつけ、「やりたいです!」とすぐに立候補。今から思えば、副業で土日しか働いていない立場で厚かましかったかもしれませんが(笑)、上司が私の清掃スキルやクオリティを認めてくれていたので参加が叶い、優秀賞をいただくことができました。ちなみに翌年も賞をいただき、2年連続受賞できたことは大きな自信につながりましたね。

 

── 誰かからの働きかけや会話でのヒントがあったのですか?

 

西山さん:

2016年のコンクール本戦でのこと、全国からホテル清掃のプロが集まって現場の困りごとやアイデアを話し合う場があったんです。そこで日ごろから感じていた問題点を提案したところ、皆さんの反応がすごく良くて。そのとき初めて、「もしかして私が考えていることって、ビジネスとして成立するかもしれない」と思いました。

 

それまで、いろんな職場で働くなかで、業務の効率化や人材育成のサポートに関わってきた経験や、13年間で20以上の施設で客室清掃の実務経験を積んできたからこそ、人と違った視点から提案ができる。いろんなスキルを掛け合わせることで、業界を改善することができるかもしれないと思うと嬉しく、心が躍りましたね。

 

他に例のないコンサル業…企業にこだわった理由は 

── とはいえ、ホテル清掃に特化したコンサル業で独立するというのは、非常に珍しいケースだとも聞いています。新しいことに挑むには勇気がいりますが、それでもチャレンジしようと思われたのはなぜでしょうか。

 

西山さん:

客室清掃は通常、現場の責任者や担当者がチェックすることがほとんどです。そこにあえて第三者が介入し、もう一段階チェックすることになるので、「何の意味があるの?その仕事って必要?」とおっしゃる方がいるのも確かです。

 

でも、第三者の客観的な目線というのは、清掃業にも欠かせないものだと思っています。自分たちだけではやはり、習慣化して見逃している不備や不足があるので。実際、現場で客室チェックをすると、担当者レベルではチェック済みのはずなのに目につく箇所が多いこともありますし、清掃スキルのレベルにもバラつきがあります。人手不足もあり、なかなかスタッフの育成まで手が届いていないというのが現状なんです。

 

── 部屋の清潔感はホテルの快適さに直結しますよね。心地よく過ごせるかどうかのポイントになりますし、ゴミ一つ落ちているだけで、ホテルの評価まで下がってしまう。実際に、口コミでも清掃に関するクレームをよく目にします。

 

西山さん:

特に日本人は、清潔感に対して求めるレベルが高いので、それだけ気を配って清掃に取り組む必要があるんですよね。そのためには、やはりスタッフをきちんと指導してホテルの清掃品質を上げることが大切。ホテルの評価にも関わりますから。実際私が携わったホテルでは、10段階で6.8だった口コミ評価を1年で8.0まで上げることができました。

 

口コミはお客様からのダイレクトな意見なので、私も毎日目を通します。「前回利用して良かったので、今度は家族で来ました」といったコメントを見るとやはり嬉しいですし、やりがいを感じます。

 

ただ、前回もお話しした通り、口コミに上がってこない“サイレントクレーム”も非常に重要なんです。利用者の声として直接上がってこないだけで身近な人には話すでしょうし、リピートはしてもらえない。そうしたサイレントクレームをいかに見つけて改善していくかは、日々意識して取り組んでいますね。

“内なるクレーム” への対応が腕の見せどころ

── 表に出てこないサイレントクレームをどうやってみつけるのですか?

 

西山さん:

今までの経験を元に、あらゆる“もしも”を想定しながら細かくチェックしていきます。例えば、バスルームの換気扇。お客様がバスタブでくつろいだ時、ふと上を見上げて、ホコリがたまっていたら幻滅ですよね。でも、ほとんどの客室清掃では、換気扇のホコリまで意識していないことが多いんです。ほかにゴミ箱の底、トイレの後ろ側などもそう。私たちの場合は、そういった細かいところまでとことんチェックしています。

 

── そういったクレームは、マニュアルさえクリアすればいいという意識でいると、なかなか見つけられないでしょうね。

 

西山さん:

ホテル清掃は職人の世界のようなところがあって、マニュアルが確立されていなかったり、あっても更新されていないことが多いんです。サービスの質を向上させるためには、しっかりとしたマニュアルが必要ですし、キャリアアップの仕組みも作っていかないと、やる気のある人材を確保できません。課題がたくさんありますが、それだけ取り組みがいがあるし、ひとつずつ変えていくことで業界のイメージアップにも貢献できると思っています。

ホテル清掃業の良い面も悪い面も熟知しているからこそ、ここまで妥協を許さずに関わり続けてきた西山さん。今後ますます、業界の常識を変えていける人なのではないかと感じます。次回は仕事に邁進してきた西山さんのプライベートでの葛藤について伺います。

 

Profile 西山貴代(にしやま・きよ)さん

大学卒業後、契約社員や派遣として国内大手通信企業、出版社などで働きながら、ホテル清掃の仕事に13年間従事。藤田観光グループ主催の技能コンクールにて2年連続受賞。ホテル清掃に関する様々な問題を経験とスキル、掛け合わせの提案で解決したいとの思いから、2017年6月、ホテル清掃に特化したコンサル会社「clean next」を起業。2020年、女性社長.netが運営する、女性社長が選ぶ女性社長アワード「J300アワード」にて、大賞「ホテル清掃のプロ!革命的な効率化スキルと魅力で誰もが憧れる職業にするで賞」を受賞。

取材・文/西尾英子 撮影/林 ひろし

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