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50年前から女性活躍を推進できたフランス社会の空気

仕事

2020.10.10

仕事に家事に育児に、その日をどうにかやり過ごすので精一杯…。そんな日常の中でふと、「これって日本だけ?海外のごく普通のママって、一体どうしてるんだろう…」という疑問が浮かんだ経験がある人もいるかもしれません。

 

共働きがメジャーになってきたのがここ10年ほどの日本と比べて、女性がもっと働きやすい環境を手にしている国はあるのでしょうか?

 

今回は、女性の就業率が80%を超える高い水準を維持しながら、少子化対策にある程度成功したフランス社会での、産休・育休後の復帰の流れとその後の働きやすさについて見てみます。

 

一般的に、働きながらの育児がしやすいと言われることが多いフランスですが、実際のところどうなのでしょうか?

 

4人の子どもを育てるパリのワーママ、アニエスさん(次回記事に登場)。

 

フランスの産休・育休は意外と短い!?

日本で産休を取る場合、雇用保険からの育児休業給付金は、過去2年間の給与水準の50~60%ということですが、これに加えて勤務先からの手当が一定期間支払われる場合が多いのではないでしょうか?

 

フランスの場合は、第一子(多胎ではなく赤ちゃん1人の場合)の誕生で、産前6週間、産後10週間は、加入している健康保険から、それまでとほぼ同額の給与が支払われます。

 

…が、問題はこのあと育休を取った場合です。

 

育児休業はまずは1年、その後、2回更新が可能で約3年間(ただし子どもが3歳になる日まで)取得することができますが、この期間の給与(健康保険からの手当)は、現在、月額約400€(約48000円)となっています。夫の収入が潤沢にある場合はさておき、何かとお金のかかる時期、この額ではやっていけないと、早めの職場復帰をする人も多いのです。

 

金銭的理由で復職せざるを得ない人も多数

先の予定に備えてコツコツと貯金をする人の多い日本に比べて、フランスは、給料日前になると、口座の残高がマイナスになる人が5人に1人というお国柄。決して無駄遣いをしているからというのではなく、貯蓄できるほどの収入がない人も少なくありません。

 

そんなところへ出産による収入減では、赤ちゃんとゆっくり過ごす心の余裕も生まれにくいですよね。

 

周りを見渡せば、金銭的な理由から、もしくはキャリア形成の面から職場を長期間離れたくないと、たいてい産後3か月から6か月ほどで職場復帰を果たす傾向にあります。

 

早めの職場復帰に欠かせないのが保育園・シッター・保育ママ

フランスも日本同様、保育園探しは本当に大変です。

 

職場復帰するための保育園探しが難しいのは、日本もフランスも同じです。特に都市部では、「妊娠発覚と同時に保育園対策をしないと乗り遅れる」と言われるほど、多くの家庭にとって第一選択となる公立保育園の入園競争は熾烈を極めます。

 

また、公立保育園に申し込みはできたとしても、確実に入所できるとは限りません。もし保育園に入れなかった場合、フランスではどうするのでしょう。

 

フランスでは、3歳になる年の9月から、幼稚園での教育が始まります。そのため保育園は、0歳から3歳までの子どもの居場所となるわけです。

 

乳児でもシッターに預けることに抵抗はない

公立の保育園や託児所(専業主婦でも週に数回預けられる)、私立の保育園、公立の託児所、個人で雇うシッター、そして保育ママと呼ばれる、自宅で最大4人までの子どもを預かる、役所の認可を受けた個人託児所などが主な預け先です。

 

日本はまだまだシッターに子どもを預けることを躊躇する人が多い印象ですが、保育ママの制度化から約40年が経過しているフランスでは、赤ちゃん時代からシッターに預けるという人も多く、抵抗は少ないようです。

 

とはいえ、預けている間にどんなことをされるかわからない、という不安はつきもので、信頼できるシッター選びには慎重にならざるを得ません。

 

復職後は時短かフルタイムか

契約によってはそれ以上働く場合もありますが、フランスでは週35時間の労働が基本となっています。

 

育休明けで復帰する場合には時短勤務を選択する女性が多く、さらにその時短勤務を、学校の送迎が不要になる年齢=子どもが10歳になるまで続けるなど、全体で見ても、約3割の女性はなんらかの形で短時間労働をしています。

 

中でも多いのは、子どもの幼稚園、小学校が休みになる水曜をのぞく、週4日だけ勤務するタイプ。ほかにも、1日の労働時間を7時間から6時間にして夕方早く帰る、もしくは出社時間を遅くするなど、フレキシブルな働き方が許されているのは、子どもを持つ女性にとって嬉しいことです。

 

フランスでもママの考え方は人それぞれ

こういった時短勤務の形態が認められている場合は、堂々と休むなり、帰宅するなりできるはずなのですが、やはり周囲の目を気にしてしまうのは、フランス人も同様。グループで進めている仕事を同僚に変わってもらったり、時短勤務のせいで昇進が遅れたりすることは仕方ないと、あきらめている女性も多いのです。むしろ、キャリアに少し空白ができても、子どもと触れ合う楽しさ、育児の充実感を味わえるということに喜びを見出す人も。

 

ただ、昇進を第一に考えるならば、フランスは保育園、シッター、保育ママなど、他の人の手に子どもをゆだねることで、仕事に邁進できる環境が整っている国だとも言えます。

 

「子どもを放っておいて」などと仮に誰かに言われたとしても、そこまで気にしないラテンな気質の人が多いこともありますが、なにより、50年近く女性の活躍を推奨してきた社会の空気も後押ししているのかもしれません。

 

50年前から女性活躍を推進してきたフランス

いま仕事と育児の両立に頑張っている世代の母親たちが、ちょうどフランスが女性の社会進出を後押しし始めた時代のワーママ第一世代。その背中を見て育ったので、男女ともに、女性が働きながら子どもを育てるというライフスタイルを自然な形で受け入れているというのもあるでしょう。

 

もちろん、フランスだって働く女性にとってパラダイスではありません。とはいえ、そういった国全体の雰囲気と、この50年の間に政府が整備してきた子育てインフラ、女性進出や出生促進のために投入してきた資金が、女性の働きやすさの土台となっていることは確かです。

 

 

次回は、冒頭の写真にも登場した、パリで働く4児のママ・アニエスさんの暮らしぶりをご紹介します。

 

取材・文/伊波裕子

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