対象を限定しないことで、誰もが利用できる制度に

 

──社長自らがトレーニングを受けるんですね!その結果、社内環境が変わった事例などはありますか?

 

今瀬さん:

制度の内容は、時代に合わせて変化させてきましたね。例えば育児・介護従事者が対象だった2004年の在宅勤務制度「ワーク・フロム・ホーム」は、2015年に「ロケーション・フリー・デー」という制度へと改定しました。特別な理由がない人でも、上司と合意すれば月5日、最大10日まで会社以外での勤務を認めるようにしたのです。セキュリティを確保できる場所であれば、働く場所は自宅でなくてもかまいません。

 

また同年には「コンバインド・ワーク」といって、会社と自宅での勤務時間を合算できる制度も導入しました。例えば14時に介護で病院に行く必要があり、会社を中抜けして帰宅後に自宅で仕事をしたとします。この場合、一日の勤務時間の合計が所定労働時間7時間40分であれば、通常勤務として認めるという仕組みです。

 

──時短勤務の社員だと自宅に持ち帰る仕事は勤務時間外と見なされることもあるので、勤務時間としてトータルで扱われるのは公平ですね。特別な理由がない人でも利用可能にしたのは、なぜでしょうか?

 

今瀬さん:

「誰でも取れる」状態にすることで、本当に取りたい人も取りやすくなります。そのためあえて対象者は限定せず、誰でも気兼ねなく取得できるようにしました。今はコロナ禍で全日在宅勤務を継続していますが、スムーズに移行できたのはそうした下地があったことも影響していると思います。

 

 

女性同士のネットワークづくりから始まり、個々の多様性に注目、そして多様性を「認め合う」ステージにまで、カルチャーを進化させてきたP&G。トップから意識変革を行うことで、社員間に多様性の本質を根付かせていきました。「そもそも男性がビジネスの現場では多数派となっている」事実をまずは全員が知ることで、見えてくるものも多そうです。

 

取材・文/秋元沙織