誰もが利用しやすい制度にするために

 

ママ社員向けの社内報「ママ報」には、育児と仕事を両立するママ社員の経験談や会社の最新情報を掲載。産・育休中も会社とのつながりを保つ役割がある

 

上村さん:

その他にも、女性社員の声を受けてできた「おちか区ランチ」という制度があります。同じ居住市区町村で4人以上ママ社員や妊娠中のプレママ社員が集まる際には、4カ月に1回、一人当たり3000円のランチ代を会社が負担します。産・育休中に会社の情報から離れてしまうのが不安という人に向けて、「ママ報」というママ社員向けの社内報も配布しています。

 

──お話をお伺いしていると、当事者の立場をとても考えた制度設計が成されていると感じます。制度が形骸化してしまうケースも多いですが、内容を決めるに当たって意識していることは何ですか?

 

上村さん:

よく私たち社員の間では「しらけ」という言葉を使うのですが、「しらけのイメトレ」をして幅広い人に利用してもらえるように設計しました。例えば、子育て中の女性のみを対象とした仕組みや制度を作ってしまうと、そこに当てはまらない人は「どうせ私には関係ないから…」としらけてしまいます。ですから、特定の人だけを優遇する制度ではなく、どういった制度なら幅広い社員に利用してもらえるかを相手の立場に立って考えています。

 

制度を策定する際には、当事者にも関わってもらいました。策定時のメンバーは人事担当や役員以外に妊娠中の私や双子のママ社員も関わり、女性社員にもヒアリングを行いました。でも、全員の言うことは受け入れられない。例えばどこかと提携しての企業内託児所を希望する声もありましたが、赤ちゃん連れて当社がある渋谷まで出勤するのは現実的ではないので、仮にこの制度を採用したとすると渋谷近辺に住んでいる人だけが利用できるものになってしまいます。選択肢は大きく広げて、内容を考えながら1つずつ選別していくことで現在の形に納まりました。

 

── 多くの人の声を取り入れることで、本当に誰もが使える制度にまで内容を深めていったんですね。

 

上村さん:

そうですね。あとはママ社員だけでなく、パパ社員も使える内容になるよう意識しました。「ママなら休んでいいけど、パパはちょっとね…」だと全く意味がないので。今回のコロナ禍に限らず、キッズ在宅やキッズデイ休暇はパパ社員にも積極的に利用されています。

 

 

覚えやすいネーミングと合わせて対象外の人が生まれない配慮を行ったことで、本当に使える制度として社内に浸透していった「macalon」。後編では、長年課題に上がっている女性のキャリアについての問題や自社らしさが出る人事制度設計について、引き続き伺っていきます。

 

取材・文/秋元沙織