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貧困家庭出身でも妊娠中でも大臣に!?男女平等の国 フィンランドの働き方

仕事

2019.08.03

2019.12.05

マルクス・コッコ報道・文化担当参事官

世界経済フォーラムが公表するジェンダーギャップ指数で常に上位にランクイン(2018年は4位)し、男女の社会的な格差が少ない北欧の国、フィンランド。

日本でも女性の活躍推進が叫ばれていますが、まだまだ課題が多いのが現状です。ジェンダーギャップ指数では149か国中110位(2018年)と低くなっています。

 

ジェンダーギャップの少ない社会って、どんな感じ?女性はどのように働いているの?

 

ツイッターでのゆるめのつぶやきが人気の駐日フィンランド大使館にお邪魔して、マルクス・コッコ報道・文化担当参事官と広報部の堀内都喜子さんにお話を聞いてきました!

  

30代女性大臣も珍しくない 教育ですべての人にチャンスを


6月、駐日フィンランド大使館のツイッターで、ことし34歳になるマリア・オヒサロ内務大臣とサンナ・マリン交通通信大臣の女性2人についての新聞記事を紹介していました。

日本の感覚からすると、かなり若い女性の大臣であること。さらに、貧困家庭や親がアルコール依存症を持つ家庭の出身ということで注目が集まり、3400件以上のリツイート、6900件以上のいいねがつきました。

 

ツイッターは広報部全体で管理しているとのことですが、このツイートをしたきっかけは何だったのでしょうか。

 

堀内さん

フィンランドでは30代女性の大臣は珍しくありませんが、貧困家庭であることや親が依存症の問題を抱えているというような背景はこれまであまりオープンに語られることがありませんでした。

すべての人に教育のチャンスがあり、恵まれない家庭の出身であっても大臣にまでなれるというのはフィンランドの素晴らしい部分です。

それをこの2人が体現していると感じたので、日本の皆さんにもぜひ、こういうことが可能なのだと知ってほしいと思いツイートしました。ここまで反応があったのにはとても驚いています。

 

コッコ参事官

この2人の話を「アメリカンドリームのようだ」と言う人もいましたが、私も極めてフィンランドらしいと思いますね。

 

フィンランド大使館に置かれた国旗

 

家庭的に難しい背景を持っている人が社会で活躍するためには、教育制度が非常に重要になるかと思います。

フィンランドの教育制度について教えてください。

 

堀内さん

大学まで授業料は一切かかりません。日本では義務教育期間中でも給食費などがかかりますがフィンランドでは無料ですし、文房具も支給されます。

高校、大学では教材費がかかりますが借りるという手段がありますし、大学では生活費や住居費の手当ても出るので仕送りの必要がありません。

 

例えばツイッターで紹介したオヒサロ内務大臣は、親がアルコール依存症だったためシェルターで暮らした経験があり、親の離婚、失業、貧困も経験しています。でも社会保障はもちろん周囲の応援にも助けられ、貧困をテーマに博士号を取得しています。本人が望んで努力すれば、博士まで取ることができるんです。

 

婦でも大臣に 「最適な人が活躍できるよう調整」

マルクス・コッコ報道・文化担当参事官

 

生活費や住居費まで手当てが出るとは…かなり手厚いですね。

日本ではいまだ政治やビジネスなどの場面で女性の進出が広がっていない状況があります。

30代女性の大臣は珍しくないとのことですが、性別による職業イメージや格差などはないのでしょうか。

 

コッコ参事官

フィンランドではことし4月に総選挙が行われ、国会議員の47%が女性という結果になりました。さらに先日発足した内閣は19人のうち11人が女性で過半数を占めていますので、政治においては男女のバランスがとれているのではないかと思います。

ただ、女性が就くことが多い職業の方が賃金が低く、結果的に男女の所得格差につながっているという課題はあります。フィンランドだけではないと思いますが、やはり介護、保育、サービス業、教育などは女性の比率が高いです。

 

では現在のフィンランドで、若い女性が活躍するうえでハードルになっていることは何かありますか?

 

コッコ参事官

もちろんフィンランドも完璧ではありませんので、特に小さな子どもがいる場合などは個々ではそういった壁もあるかもしれません。

ただ、その一方でたくさんの成功事例があります。例えば、現内閣のアンニカ・サーリッコ科学文化大臣は妊娠中で、夏に第2子を出産予定です。そのため、出産後1年間は別の議員が大臣の職を務めることが決まっています。大臣のような高い役職でも話し合って調整していますので、大きな目で見た時にはハードルはなくなってきていると思います。

 

日本では、妊娠中の議員が大臣になるというのはちょっと想像できません。驚きました。

 

堀内さん

これまでもこういった事例はありました。彼女が最適だということになれば、力を発揮できるように調整するという考え方ですね。

 

保育が充実、ワークライフバランス重視の働き方

堀内都喜子さん

 

状況よりも個々の能力を重視しているんですね。

フィンランドは国際NGOセーブ・ザ・チルドレンが発表していた「お母さんに優しい国ランキング」や「ジェンダーギャップ指数」で常に上位に入っています。こうした世界に誇るべき文化の背景にはなにがあるのでしょうか。

 

コッコ参事官

フィンランドは小国で、人口も550万人しかいません。森はたくさんありますが天然資源は少なく、生き残って成功していくためにはすべての人間を生かすしかありませんでした。

そのため教育と社会における平等というのは、かなり古くからフィンランドでは意識されてきました。

 

堀内さん

フィンランドには「1人も取りこぼすべきではない」という考え方があります。

もちろんフィンランドでも、保育は母親という意識の時代もありました。第二次世界大戦後、女性が働かなくてはならない状況になっているのに保育の制度がなかった。そこで女性が声を上げ始め、すべての子どもが望んだタイミングで保育園に入れるよう自治体が対策することを定めた「保育園法」ができるなど、社会が変わっていきました。

 

労働人口減少の中で女性の活躍を促そうとしている日本と似ている部分がありますね。

 

コッコ参事官

そうですね、でも日本はまだたくさんの可能性があると思います。フィンランドはすでにほとんどの女性が働いていますから。

マルクス・コッコ報道・文化担当参事官

 

望んだタイミングで子どもが保育園に入れるというのは、女性が働く上で非常に重要だと思います。

男性も育休を取得する人が多いのでしょうか?育休明けの働き方はどうなりますか?

 

堀内さん

8割程度の男性がパートナーの出産直後に育児休暇を取得しています。さらに、ワークライフバランスを重視していますので、基本的にみんな残業はしません。子どもや家庭に関わる時間というのは男性も女性も取りやすいです。

フィンランドでは、途中から無給ですが3年間の育児休暇を取得することが可能ですので、長く育休を取得する女性も多いです。

無給の間も自治体や国から月に数万円の手当てが出ますし、仕事では必ず同じポジションに戻れると決まっています。さらに先程も触れましたが保育園も希望したタイミングで入れますので、せかされることなく個々のタイミングで復帰する、という状況です。

女性の社会進出が進んでいるというと、母性があまりなくてバリバリ働いているというイメージを持たれがちですが、お母さんとして子どもと一緒にいたいという気持ちはもちろん持っているんですよ。

 

男性だから、女性だからという見方ではなく、能力がある人が活躍できる。そうした考え方が徹底していると感じました。

制度は大きく違っても、私たちが学ぶべき点がたくさんありそうです。

 

ジェンダーギャップの少ないフィンランドでは、男性の家事・育児へのかかわり方はどうなっているのでしょうか?「フィンランドのお父さんに聞いてみた!子育て事情と父親の家庭進出」では、コッコ参事官に子育て中の男性編集者が男性の家庭・育児参加について聞いています!

 

 

PROFILE

マルクス・コッコ報道・文化担当参事官

マルクス・コッコ報道・文化担当参事官

1971年、フィンランド生まれ。ヘルシンキ大学で国際政治学の修士号取得。2014年まで国外のメディアにフィンランドの産業や企業などの情報を提供する団体「Finfacts(フィンファクツ)」の所長を務めた。2015年9月より現職。

 

堀内都喜子さん

堀内都喜子さん

長野県出身。フィンランドのユヴァスキュラ大学大学院でコミュニケーションを専攻し修士号取得。帰国後は都内のフィンランド系機械メーカーに勤務しながら、ライター、通訳なども行う。2013年より現職。

 

文/小西和香 写真/小林キユウ

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