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元・モラハラ当事者がカウンセラーになった理由

コミュニケーション

2021.04.18

2021.04.27

中村さん連載バナー

こんにちは、メンズカウンセラーの中村カズノリと申します。

 

これから月2回、「CHANTO WEB」読者の皆さんの様々な夫婦・家族関係のお悩みにお答えする形で、連載をさせていただく予定です。

 

こうした「お悩み相談」を公開の場で行う経験は初めてですが、どうぞよろしくお付き合いください。

モラハラ当事者だからこそ言えることがある

以前のインタビュー記事(※)をご覧いただいてご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は元・モラハラ当事者です。

 

僕が所属するメンズカウンセリング協会では、DVやモラハラの加害者と被害者を区別せず、どちらも「当事者」と呼びます。妻にとっては「加害者」である夫が、自分の親や上司に苦しめられてきた「被害者」であるという場合もあり、加害・被害の問題は複雑に絡み合っていることが多いんです。

 

僕の場合も、加害者であり被害者でもあったと言えるでしょう。 けれども、様々な人に支えられ、少しずつ回復することができました。その経験を生かし、同じように苦しんでいる人の支えになりたい。そんな思いでカウンセラーの道を選びました。 

生まれ育った環境が大人になっても影響しつづける

僕にとって、原家庭(生まれ育った家庭)は安らげる場所ではありませんでした。虐待を受けた子が大人になり新しい家族を作った際、その子どもにも虐待をしてしまう「世代間連鎖」という言葉があるように、原家族での体験はその後の自分のコミュニケーション様式に影響を大きく与えます。

 

僕自身、親からことあるごとに、精神的にあるいは身体的に、理不尽に傷つけられてきました。「漫画が好き」という個人の価値観に対し「そんなくだらないもの」と決めつけ全否定することや、「笑い方が気持ち悪い」「お前の言うことなんか誰も信じない」など、尊厳を踏みにじるような言葉。ひどいときは、殴るなどの物理的な痛めつけもありましたが、当時は「それも“躾”のうち」と正当化されていました。

 

しかも、僕が子どもの頃は、家庭内で起きるこのような状況について、気軽に相談できる場はありませんでした。家の中において親は絶対的な権力者であり、虐待が起きても今のように児童相談所の介入があることも稀でした。地域差もあるでしょうが、僕の育った町は田舎でしたし、時代的に男女観、家庭観について今より封建的だったことも影響していると思います。

 

「連鎖」という観点から言えば、虐待をする側もまた、抑圧を受けていたことは間違いありません。しかしどちらにせよ、親から受けた傷は、僕の心に深く刻まれることとなりました。

田舎育ちの男の子

いつも不安で、自己防衛に陥りがちだった

親元を離れて一人暮らしを始めてからも、理由のない不安がいつも付きまとっているような状態でした。そうなると、ちょっとしたことでも「反対意見を出されることイコール人格を否定されること」というような、実際以上に手酷く攻撃された感覚に陥ってしまうのです。

 

モラハラやDVの怖さというのは、ここなんですよね。本人は自覚のあるなしに関わらず自分の言動を「自己防衛」だと捉えていて、そうしなければならない自分は被害者だと感じています。なので、そのままではどこまで行っても話が噛み合いません。

加害者は自分を“被害者”だと思っている

僕の場合、10年以上前に最初の結婚をしたあともその傾向は変わらず、何か意見の相違があるたびに強い言葉でやり込めて相手を黙らせていました。僕の感覚では、攻撃されて反撃したという正当防衛だったのですが、その裏にはこれ以上否定されたくないという恐怖心がありました。「やられる前にやれ」で加害をしてしまう人というのは、本当は弱虫なんです。

 

耐えかねた前の妻からモラハラを指摘され、夫婦関係をやり直す条件として加害をやめるための某プログラムに通うことを提示されたので、それに従いました。ところが、そこではファシリテーターとの相性が悪く、僕のプライベートな悩みを無断で他の参加者にアウティング(他人の秘密を本人の許可なく別の人に言うこと)されるという事態が起こり、さらに傷つきを深めることになってしまったのです。

 

ここまで読んで、もしご興味をお持ちくださり、さらに詳しく知りたいと思った方にはぜひ、僕の共著書を併せてお読みいただけると嬉しく思います。

一人の専門家の意見が「絶対」じゃない

この経験から、もしも1つの相談先で「思っていたのとは違う」ということがあれば、医療のセカンドオピニオンと同じように、別の専門家を探してみることをおすすめしています。

 

この連載でも、僕の回答がしっくり来なければ、ぜひ他の方のご意見も聞いてみてください。それは、まったくもって遠慮するようなことではなく、むしろ前向きで次につながるアクションだと思います。僕が身をもってそれを証明しました。

 

前妻にモラハラを指摘され別居、最終的に調停離婚という結末を迎えたのが、7年ほど前のこと。その前後で繋がった「セカンドオピニオン」で、僕は自分の根っこにあった被害感情ややり場のない思いに気づくことができました。そして、「モラハラ加害者」であった自分の回復の始まりを感じるまでになったのです。

カフェで会話している男女

加害者の気持ちに寄り添い、共に考える場が僕を救った

そこは、「法律での善悪」や、世間でいう“普通”の価値観からはある種解放された場でした。もちろん、暴力や暴言といった「加害行為そのもの」は肯定されるものではありませんが、その加害行為に至ってしまった心の動き、「頭ごなしに怒られてムカついた」「見捨てられると思ってパニックになった」というような気持ちを否定されることはありませんでした。

 

例えるなら、友達をたたいてしまった子どもを「そんな乱暴をしていたらまともな人になれないよ!」と叱り飛ばすのではなく、まず事情を聞いて「おもちゃを取られて悲しかったんだね」と寄り添いつつ、「でも、叩く以外に気持ちを伝える方法はなかったかな?」と一緒に考えてくれるような場所。ここが、最初に訪れたプログラムとは大きく違う点でした。

 

加害に至ってしまった感情や、その感情を持つに至った自分を作り上げてきた、原家族や社会での体験こそ、重視される。そんな場所で、自分の思いを他の当事者と自由に話す…それこそが、回復のために重要だったんですね。今、人間関係で問題を抱えているすべての人に、その大切さを知って欲しいと思います。

文/中村カズノリ イラスト/竹田匡志

 

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