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花まる学習会・高濱正伸「子どものひとり暮らし」効果と向き合い方

子育て

2022.05.13

引っ越し

「子どもの自立に必要な力」をそれぞれの専門家に伺う「自立力の育て方」特集。

 

家事や時間管理などを自分でしなければいけない「ひとり暮らし」は、生活力もつき、自立の近道のように思えます。

 

「ひとり暮らしが子どもに与える影響」について、花まる学習会代表の高濱正伸さんにお話を伺いました。

ひとり暮らしは自立のきっかけになる

── ひとり暮らしは子どもにとって、どのような経験になるのでしょうか。

 

高濱さん:

ひとり暮らしを始めると、掃除や洗濯など、さまざまなことを自分でやるようになります。「こんなことまでやらなきゃいけないの」と驚くこともあるはず。その経験は、自立を促すきっかけになります。

 

── ひとり暮らしの有無は、どういった違いとして現れるでしょうか。

 

高濱さん:

ひとり暮らしをしている人は、給料や仕送りの大半を家賃に費やします。

 

その点、実家暮らしだと、家があって当たり前で、家賃を払わなくていい環境。お金回りが良く、甘い汁を吸って生活をしているとも言えます。

 

でも、保護者に依存し続けることはできませんよね。実家暮らしを続けても、そのことに気がつければいいのですがなかなか難しい。ひとり暮らしは「自立」を促すきっかけになると思います。

思春期以降は「外の師匠」が育てる

── 子どものひとり暮らしに向けて、保護者ができることは何でしょうか。

 

高濱さん:

難しいことは考えずに、まずは放り出してみればいいと思います。ただし、ひとり暮らし先が安全な環境かは確認しておきましょう。納得したところに出すのがいちばんです。

 

子どもは思春期に差し掛かると、ふつふつと内側から自立への気持ちがわいてくるもの。これは保護者が育てる段階から、部活動のコーチなどの外の師匠が育成するステップに移った証拠とも言えます。

 

子どもが自立し始めると、「話してくれなくなった」「態度がそっけなくなった」など、気になることも出てくるでしょう。直接対話できればいいですが、思春期には難しい場合もある。その際は、外の師匠に口添えして、その人から話してもらうようにしましょう。そのほうが、子どもはアドバイスを素直に受け取れます。

ひとり暮らしの子どもの部屋が汚い理由

── いざ子どもがひとり暮らしを始めると、心配で掃除しに行ってしまう。こういうことは、やっぱり良くないんでしょうか。

 

高濱さん:

保護者の精神上、そのほうが落ち着くのなら、子どもが了承してくれる限りは行ってもいいんじゃないでしょうか。子どものほうも「親がそうしたいなら」と放っておいてくれると思いますよ。

 

「部屋が汚いのが気になる」と言う保護者もいますが、彼らの気持ちを代弁するなら「掃除するくらいだったら、クリエイティブなことに時間を割きたい」と思っているだけです。

 

もちろん、これは自室にのみ当てはまるルールで、共有スペースはきれいに使わないといけません。下宿でもシェアハウスでも誰かと一緒に住むのでも、そこは社会と同じ。靴は揃える、指定の場所に物を戻す。そういう線引きを教えてあげればいいと思います。

散らかった部屋

 ––– 食生活の面で保護者ができることはありますか?

 

高濱さん:

食事は大切ですね。ひとり暮らしを始めると、好きなものや簡単なものばかりを食べて食生活が崩れる子が多いですから。

 

子どもには幼少期から、食事をする際などに、「ビタミンを取るためにカボチャ、カルシウムのために牛乳」など、栄養素を伝えるといいでしょう。そうすることで、子どものほうから「今日はカルシウムがたりないんじゃないか」と栄養バランスを考えるようになります。

 

最近は共働きで、総菜やレトルトを使うご家庭も多くなりました。必ずしも手料理にこだわる必要はありませんが、栄養素を伝えて、栄養バランスを考える機会を与えておくのがいいと思います。

ニュースは意見を交わしながらみる

── 社会に出るときに必要となる、政治などのニュースにはどう触れさせるべきでしょう。

 

高濱さん:

社会というのはさまざまな意見の総体ですから、中立の意見ばかり紹介していては子どもは興味を示しません。

 

保護者の方には、時事問題に対するご自身の意見を持っていてほしいと思います。偏っていると言われるような意見でもいい。

 

ニュースに触れさせるときは、「これはお父さん/お母さんの意見だけど」と前置きしたうえで、自分の意見を子どもに伝えてみてください。押しつけるのではなく伝えるのです。そうすることで、子どもの脳内に初めて、「それは正しい意見なのだろうか」と考える力が働くのです。

 

以前、公民が苦手だった女子高生に、切り抜いた新聞記事をスクラップブックにして、周りの人の意見をまとめるように伝えました。私も、やや偏った意見だったかもしれませんが、自分が思っている本音を彼女に伝えました。そうすると1か月ほどで、「公民って面白い!」と彼女の好奇心に火がついたのです。

 

本音ベースのやりとりは、子どもの考える力を育みますよ。

実家暮らしでも留学や言葉かけが自立の助けに

 ––– ひとり暮らしをさせてあげたいけれど、「やはり心配」という声もあります。

 

高濱さん:

ひとり暮らしと言えば高校生や大学生、社会人からが一般的ですが、小学生で参加できる山村留学でも同じ効果があります。

 

山村留学は自然豊かな農山漁村に子どもだけで移り住み、地元の学校に通う体験です。その期間は短くても長くても、大きく成長するきっかけになるでしょう。ある保護者は、「山村留学から帰ってきた子どもが自主的にトイレ掃除をしていて驚いた」と話していました。

 

── 経済的に留学などは難しい場合もありますね。

 

高濱さん:

子どもが「ひとり暮らしがしたい」と言っているのなら、その時点で大丈夫だと思います。

 

言い出さない子どもの場合は、実家暮らしだと楽ができると思っているのかもしれませんね。

 

自立を促すために、普段から家族の一員としての役割や暮らしのルールを伝えておくといいと思います。例えば、「中学生になったら共有スペースに掃除機をかけてね」「18歳になったら家賃を入れてね」など、幼いころから事前にルールを決めておくと、成長したときに子どももすんなり受け入れてくれます。

 

ひとり暮らしが絶対に正しいわけではありません。ひとり暮らしをさせない場合でも、自立を意識した接し方を心がけましょう。

 

PROFILE 高濱正伸さん

花まる学習会代表。1959年熊本県生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ進学。同大学院修士課程修了後、1993年に「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「思考力」「国語力」「野外体験」を指導の柱とする学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック委員会理事。

取材・文/ゆきどっぐ イラスト/加納徳博

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