2019.08.29

叩かない子育てができない…しつけと体罰の決定的な違い

ゲームをしている子供に怒る母親

マスコミやインターネット上で、しつけのために子どもを叩くことの是非がたびたび話題になっています。

 

今回は、「しつけ」と「体罰」は何が違うのか、あえて子どもを叩いてしつける人と叩かない人、そして叩きたくないのに叩いてしまう人の心理や、叩かずに子どもを育てるために何ができるのかを考えてみました。

 

「しつけで叩く」と「叩いてしまう」の最大の違いとは


実は、江戸時代の日本では、「子どもを叩いてしつける」という習慣はなかったそう。

 

それが明治以降、軍国主義の影響でいつのまにか「叩くしつけ」が広まり、容認されてきたのではないかといわれています。

 

あえて叩くしつけをする人は、「叩かれた痛みを教える」という目的で手加減して叩いたり、カッとしてではなく冷静な判断で叩いたりできるといいます。

 

いっぽう、子どもを叩いたことがない人からは「叩くほど腹が立つことがない」「子どもはできないことばかりで当たり前だから」という声が多いですが、中には次のような意見も。

 

「私は未熟な人間なので、一度叩いたらそれがクセになったり、エスカレートして虐待にならない…という自信がありません。だから最初に何があっても叩かないと決めてしまいました。どんな時もしつけと暴力の線引きをしっかりして、怒りの感情に任せてたたかない…という自制心のある人は、私なんかより親としてふさわしいと思います」(Uさん・31歳・3歳児と0歳児のママ)

 

そして、一番つらい思いをしているのは、「叩きたくないのに叩いてしまう」人とその子かもしれません。

 

叩いてしまうきっかけは、登園時間や寝る時間が迫っているのに着替えや支度をしない、ママを叩いてきたので思わず…など色々ですが、共通しているのは「余裕がない」ということです。

 

時間の余裕がない、妊娠中・夜泣きで睡眠不足・2人3人をワンオペ育児など体力に余裕がない、お金に困っている・夫との関係が悪化など精神的に余裕がない…と追い詰められているときに、子どものイヤイヤに耐え切れず手をあげてしまい、「余裕があれば叩かなかったのに…」とたくさんのママが後悔しています。

 

そして、叩いたあとは「またやってしまった」と罪悪感でいっぱいになり、「大好きなのにどうして怒りが抑えられないの?」「叩く前に時間が戻ってほしい」「この子が他の子やきょうだいを叩くようになったら私のせい」と自分を責めたり、「叩くのを止められない自分がこわい」「虐待のニュースを見ると、次は自分じゃないかと思う」そして、「消えてしまいたい」と苦しむママが本当にたくさんいます。

 

「子どもへの体罰禁止」法規制のメリットは


現在、子どもへの体罰を法的に全面禁止している国は、すでに世界で50か国を超えています。

 

日本でも「児童虐待防止法」が改正され、「親による体罰の禁止」が明記されました。

 

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「欧米とは国民性が違うのに、日本で法規制をする必要性があるのか」「もっと聞き分けのない子どもが増えるのでは」という声も聞かれますが、それよりも大きなメリットが2つあります。

 

1つは、緊急に助けなければ命が危険な、虐待されている子どもを救うこと。

 

「しつけ」という名目がある限り、周囲が虐待を食い止めることが難しいからです。

 

飲酒運転や公共の場での喫煙が昔と比べて激減したことからも分かるように、法改正によって社会の意識も変わります。

 

以前も紹介しましたが、いまから約40年前に体罰禁止を法制化したスウェーデンでは、当時「体罰は必要/やむを得ない」と考える人が79%いたのに対し、現在では2%以下になったそうです。

 

日本では、現状まだ罰則などの規定があいまいですが、今後「叩くのはしつけではなく犯罪」という意識が社会に行きわたれば、子どもの虐待の一定の歯止めになるはずです。

 

もう1つの大きなメリットは、親たちから「体罰をしてでもしつけないといけない」という選択肢が消えること。

 

「叩きたくて叩いているんじゃないけれど、どうしてもコントロールができない」というママには真面目なタイプの人も多く、「この悪い行動を早くやめさせないと将来が心配」と考えたり、周囲からの「もっと厳しくしつけないと本人のためにならない」という声に敏感に反応して、「叩く」という方法で早く結果を出そうとしてしまいがちです。

 

周囲からの「どんな手段をとっても、ちゃんとしつけるべき」というプレッシャーに対し、「叩いてでも」という選択肢が消えることで、「私はこの子をよりよく育てるためにできることは全てやっている」と思えるようになれば、ずいぶん楽になるでしょう。

 

 

叩かない子育てやしつけ、どうやればいいのか分からない


「叩きたくないのに叩いてしまう」と悩むママがしばしば口にするのが、「叩かずにどうやってしつけたらいいのか分からない」ということです。

 

自分自身が親に叩かれて育った人はもちろん、そうでない人にも「しつけ」という漠然とした目標は捉えどころがないもの。

 

核家族化した現代ではお手本となる人もなく、いざ子育てが始まってみたら具体的にどうすればいいのか分からない…ということは珍しくありません。

 

そもそも「しつけ」とは…?

しつけの最終的なゴールは、「社会のルールや人として望ましい行動を、自分でコントロールしてできるようになること」ではないでしょうか。

 

「自分でコントロール=自律」ができるように根気よく教え、できるまで待つのがしつけだといえます。

 

いっぽう、今すぐできるようにさせようとして叩くと、その時は言う通りにするかもしれませんが、それは「他律」であり、叩かれない場面でも自分をコントロールできる子になるかどうかは疑問です。

 

叩かない=甘やかす ではない

なお、「叩かない」ことと「甘やかす」「子どもの言いなりになる」ことを同一視している人もいますが、それは全く別のもの。

 

いけないことは真剣に叱り、受け入れられない要求をきっぱり断るのは、叩かなくても可能です。

 

ただし、そこには相当な忍耐と根気が必要。

 

悪ふざけは1回注意したくらいではやめないでしょうし、片付けをしない、公園から帰らない…なども、1回言い聞かせてできるようになることはまれで、長期戦の覚悟でかからなくてはなりません。

 

「ごはんの時間だから帰ろうね」と理由を話して言い聞かせるだけでなく、「あと3回滑り台滑ったら帰ろうと思うんだけど、できる?」と子どもに主導権を持たせるように仕向けたり、「どっちが早くお砂場セットをバケツに入れられるか競争しよう!」とゲームを仕掛けてみたり…忍耐力も知恵も総動員させて、毎日根気よく進めていくのが子育てなのかもしれません。

 

「叩かない子育て」のためにできること


「子どもを叩きたくないのに止められない」という人のために、次のような方法が紹介されています。

 

平成29年に厚生労働省が配布した「愛の鞭(むち)ゼロ作戦」のパンフレットには、

 

・イライラしたときは、深呼吸する・数を数える・窓を開けて風に当たるなど、自分なりのクールダウン方法を見つけておく
・育児の負担を一人で抱え込まずに、家族に分担してもらっ たり、自治体やNPO、企業などのさまざまな支援サービス (ファミリーサポート、家事代行サービス、一時預かりなど) の利用も検討

 

などの方法が紹介されています。

 

そのほか、ママたちが実際にやっている方法として、

 

「手をあげそうになったら、そのまま自分の腕や足を叩いたり握ったりするとやり過ごせます」

 

「歯磨きの仕上げ磨きを邪魔してばかりなので、叩く代わりに変顔をして笑わせています。あまり得意じゃないけど…」

 

「子どもが宿題をしないことで、叱ってばかりで子どもはもっと荒れて、叩くことも増え…。思いきって担任の先生に、実は宿題のことで子どもとの関係が悪く、笑顔がない状態ですと相談して、しばらく叱らずに様子を見させてもらいました」

 

「自治体で、LINEを使って相談できる窓口があったので、わらをもすがる思いで相談。子どもとのコミュニケーションの取り方を学ぶ講座を無料で受講させてもらえました。少しずつ接し方が変わってきたと思います」

 

「リアルな友人に相談すると幻滅されるのが怖くて、誰にも話せませんでした。そんな時、SNSで同じ気持ちの人を見つけて、叩かないように誓いあったり、励まし合うことでとても力づけられました」

 

などが挙げられます。

 

気持ちを切り替えるために別の部屋で1人になろうとしても、子どもが泣きながらついてくるのでうまくいかない…という人や、本当は短時間でも人に預けたいけれど、夫や身内に批判されたり、金銭的余裕がなくて諦めているという人もいます。

 

セルフケアやリフレッシュが簡単にできないからこそ苦しんでいるママが本当に多いことが分かりますが、上記が全部できなくてもいいし、いつもできなくて構いません。

 

今できることをひとつでもふたつでもできれば、必ず前に進めるはず。

 

また、周りが理解してくれなくても、1人での子育ては想像以上に大変であることは間違いない事実です。自分で自分を認め、ねぎらいましょう。

 

そして、自身は親から叩かれて育ったけれど、自分はそれを断ち切ろうとして今がんばっている人は、本当に偉大なことをしています。自信を持って下さいね。

 

まとめ


世界の流れをうけ、今後は日本でも体罰以外の方法で子どもにルールやマナーを教えていく時代になるでしょう。

 

いまの子どもたちが大人になった時には、体罰や虐待が過去のものになっていることを願います。

 

文/高谷みえこ

参考:平成28年度 厚生労働科学研究費補助金 健やか次世代育成総合研究事業「子どもを健やかに育むために~愛の鞭ゼロ作戦~」

特定非営利活動法人 子どもすこやかサポートネット「子どもを守る活動 国内外の動き」

 

高谷 みえこ

ライター歴15年。大手企業サイトなどで執筆を行う。得意分野は女性・主婦向けの記事。育児ポータルサイトでは新米ママのお悩み相談コーナーで回答者を務めた実績を持つ。