どうしてもカラオケしたくて(佳奈さん/30歳/パート)
「昨日、男の人とホテルに入って行ったでしょ?」 保育園のママ友に耳元でささやかれ、頭が真っ白になりました。確かに昨日は不倫相手とホテルにいったので、心当たりはあります。でも50kmも離れた隣の市の郊外のホテルですし、しっかり周りを確認してから入りました。 見られているわけがない、でもママ友はそれを目撃したと言っている。「あてずっぽう?」とも考えましたが、日と場所もピンポイントなのでそれは考えにくい。一瞬の間にめまぐるしく、頭をフル回転させます。 なんとかごまかさなくては、でもあまり沈黙が続くと怪しまれる。思わず口にしたのは「あ~、あれは友達よ、友達!」平静を装いつつ、心臓バクバク。自分で言いながら、(友達とラブホに入る理由ってなんだ!?)と考え始めて。 冷や汗が背中に流れるのを感じながら「あそこのホテル、カラオケあるじゃない? ふたりでカラオケしようって話になったんだけど、あの辺カラオケ屋がなくてさ〜」と、無茶苦茶な言い訳を続けました。 分かっていたんです、あまりにも無理があるのは。でも、このときの私にはこれが限界でした。あまりに苦しまぎれの私に同情してくれたんでしょうか、ママ友もそれ以上は追求してきませんでした。