《フォーマルではなく、カジュアルに楽しむ“キモノ”》
皆様は、“着物”を着る機会が多いでしょうか?おそらく多くの方が、「結婚式や入学式に着る」等、主にフォーマルシーンで着用されているのではないでしょうか?浴衣以外の和服はお持ちでない方も多いかと思います。 私は、武道や茶道を習っていたので、フォーマルからカジュアルまで必要最低限の着物は持っていますが、正直色留袖等のフォーマル用着物は着るのに手間がかかるし、汚さないように気を遣うので、着て心底楽しいという訳ではありません。それから、フォーマルシーンにおける王道の帯結び“二重太鼓” 結びが「座布団くっつけている様でおもろくない形だな(笑)」と、帯結びの形が個人的に好きではありません…(しかしながら、和装のマナーでは“袋帯で二重太鼓結び”というのがフォーマルな席でのお約束なので、仕方なく締めている感じです。) しかし、やはり京都や鎌倉、川越等の和の情緒あふれる場所への小旅行は、和装で行くと気分が上がりますし、海外からのお客様の歓待にはやはり和装が喜ばれるため、着物を保有・着用するメリットは意外とあります。 そんな私は、最近は洋服感覚で着られる“カジュアルキモノ”の着用率が高くなりました。洋服社会の街中でも悪目立ちせず、着付けも簡単で自宅で洗える気軽さも持ち合わせたカジュアルキモノなら、洋服感覚で着られてタンスの肥やしになる事もありません。何より着ていて楽だし、ファッションとして大いに楽しめます。 今回は “気軽に楽しむ着物=カジュアルキモノ”について語りたいと思います。
写真:フォーマル用の留袖と袋帯。結婚式や祝賀会等の慶事専用ですが、最近は慶事が少なく出番が…(涙)
《洋服感覚で着こなせる“デニムキモノ”のススメ》
洋服感覚で気軽に楽しむなら、私は木綿の着物、特に“デニムキモノ”をお勧めします。 このデニム素材、着回し力が抜群の素材だと思います。デニム仕立ての着物だと、洋服と同じ感覚で着用できて、自宅の洗濯機で洗濯も出来るので、“普段着感覚で楽しむキモノ”の入門編としてお勧めです。 私のデニムキモノは“ニュアンスグレー”という色味のものですが、主張しすぎない落ち着いた色合いで気に入っています。デニムというカジュアルな素材なので、結婚式や一流レストランでの会食等には着用できませんが、街歩きやお花見、カジュアルなランチ会等にはぴったりだと思います。 また、通常の着物の着付けルールだと、着物の下には“肌襦袢”“裾除け”、“長襦袢”等の和装用アンダーウェア着用がお約束ですが、私は半襟付きの肌襦袢に着脱可能な付け袖を付けた“うそつき半襦袢”と、キュロットスカート形状のペチコートをデニムキモノの下に着ます。一から和装小物を揃えなくても最低限で大丈夫(笑)。 履物は白足袋に草履だと格好いいですが、あえてデニムのカジュアル感を活かすのであれば、足袋型ソックスに下駄を合わせても可愛いです。中には幕末のヒーロー、坂本龍馬風にブーツを合わせる方もいます。 この様に、デニムキモノは従来の和装のルールに縛られず、気軽なファッションとして楽しめます。 また、「そもそも着付けが出来ないのにどうやってキモノを着るの~?」という方の為に、今では上下が分れていて簡単に着用できる二部式のデニムキモノもあります。実は私のデニムキモノも二部式です(笑)これなら、本当に洋服感覚でさっさと着られますので、着付けの知識がなくとも綺麗な着姿が実現します。 「旅行先で着物を着たい」、「海外にホームステイに行くので演出に着物を持っていきたい」という方にも、かさばらない二部式着物はお勧めです。デニムキモノといえ、和装をすると普段とは違う自分を演出できますし、キモノを着ると、小股で歩いたり袂を抑えたり等、何気に女らしい所作が加わり女子力がUPします(笑)。 我が家の場合、子連れ外出の時にデニムキモノを着ると、子供が母親を見つける良い目印になるそうです。
写真:デニムキモノと半幅帯のコーディネート。更に羽織を着ると帯結びがイマイチでも隠せます(笑)。
《帯は半幅帯やファブリック帯がお勧め♪》
着物を着る上で絶対必要になるのは“帯”ですが、この帯結びが着物初心者にとっては鬼門になります。 しかし、名古屋帯や袋帯を用いて王道のお太鼓結びをするのではなく、半幅帯やファブリック帯で簡単な結び方をするのであれば、帯結びのハードルがずっと低くなります。 カジュアルキモノであれば、むしろ名古屋帯や袋帯ではなく、半幅帯やファブリック帯(兵児帯に近い帯)を合わせる方が軽快な着姿になり、帯の結び方で様々な変化も楽しめます。
写真:「名古屋帯のお太鼓結び」、「半幅帯のリボン角出し結び」、「兵児帯の蝶結び」
まず半幅帯ですが、基本的に体の前側で帯を結んで、結び目を背中側に回す方法が主流です。ゆえに帯結びの時に手があまり疲れません。浴衣に合わせる帯結びの定番「文庫結び」が出来ればカジュアルキモノにも十分通用しますが、大人の女性であれば何種類か変わり結びを覚えておくと、着こなしに変化が付けられます。 私が好む半幅帯の帯結びは「リボン角出し結び」で、要はリボン結びの変型判なのですが、文庫結びより大人っぽくて、かつ結ぶのも簡単なので気に入っています。今は帯結びの方法を紹介する動画等も沢山あるので、幾つか得意な帯結び方法を覚えておくと良いかと思います。 半幅帯の素材ですが、個人的には博多織の半幅帯は汎用度が高くてお勧めです。多少値段が張りますが、浴衣にも合わせられますし、ハリがある生地なので締めやすく、帯結びの形もビシッと決まります。(ポリエステル素材は価格がお手頃ですが、滑りやすくて帯が締めにくいので、初心者には扱いにくい気がします。) また、博多織の半幅帯の多くは裏表に違う柄が入っているので、1本持っていると2種類の柄を楽しめます。 その他、柄を染めた半幅帯もありますが、絹地の染めの半幅帯はカジュアルキモノを華やかにランクアップできます。染めの半幅帯も表裏違う柄が入っているものが多く、これまた着こなしの幅を広げてくれます。 一方のファブリック帯は、子供・男性用の兵児帯に近い帯です。素材も様々なものがありますが、こちらの帯ならリボン結びが出来れば帯結びは完結します。ファブリック帯も半幅帯と同様、リボン結びを応用して、色々な変わり結びが楽しめますので、大人の女性にはシックな変わり結びを個人的にお勧めします。 ファブリック帯の最大の長所は「かさばらず、結ぶのが楽」な所ですね。帯が緩んでもさっさと直せますし、電車や車で長時間移動する時に、乗り物の背もたれに背中を預けても楽なので、旅行に最適です。 私の持っているファブリック帯は、浴衣用の麻素材と、秋冬用の絹素材のものですが、麻素材のものはとても涼しく、絹素材のものは適度な艶とボリュームがあり、カジュアルキモノをランクアップして見せてくれます。 半幅帯もファブリック帯も、名古屋帯や袋帯に比べると変わり結びのバリエーションも多く、帯締めや帯揚げ等の小物をプラスすることで、1枚の帯から何通りもの着こなしを楽しめます。
写真:出番の多いカジュアル帯。左から「染め絹地半幅帯」、「博多織半幅帯」、「紬のファブリック帯」。
《私の考える和装のメリットいろいろ》
個人的に、和装のメリットとして大きいのは「年齢を重ねても着られる」事ではないかと思います。かくいう私も最近は結婚式や入学式等の慶事には和装で参加します。理由としては昔着用したフォーマルスーツやドレスが似合わなくなり、新たに購入するのもおっくうになりまして…(汗)。やはり洋装ですと年代ごとに見直しが必要になりますが、ベーシックな色味や柄行きの和装なら年齢問わず着用できて、持っていれば何かと使えると思います。なにより体形の変化および肌をさりげなく隠せるというメリットが大きい(笑)。フォーマル仕様の着物と帯の一対は、30代後半以上であればフォーマルな洋装代わりに購入しても損ではないかと思います。 フォーマルシーンだけでなく、カジュアルファッションにおいても、年代に応じた装いがあると思いますが、カジュアルキモノおよびフォーマルな着物は、若い世代なら半襟や帯周りの小物の差し色を明るくすることで可愛らしく、ミドル世代であればシックな差し色で落ち着いて見せる事で、長年着用できると思います。娘さんのいる家庭なら、大事に着ていれば将来娘さんに譲る事も出来ます。
写真:帯周りのイメージチェンジの例。同じ柄の帯でも暖色系の小物をプラスすると可愛らしく、寒色系の小物をプラスすると落ち着いた印象になります。
また、カジュアルでもフォーマルでも、海外の人にも大人気で、興味を持ってもらいやすいので「外国語会話の実践の機会が欲しい、でも自分から声掛けするのは勇気がいる…」というシャイな方は、是非カジュアルキモノを着用して頂きたいです。観光地や街中で、洋装の時よりは外国人から声をかけられる機会が増えますので、それをきっかけに簡単な会話の糸口をつかむ事ができるかもしれません。 それから、女の子がいらっしゃる家庭なら、将来カジュアルキモノと半幅帯を持たせて子供を海外のホームステイに送り出す…という事もできますね。国際親善アイテムとしても役立つと思います。経験上、現地で外国人にキモノを着せてあげるのも喜ばれます。 (ただし、結婚式等フォーマルな集まりに、カジュアルキモノや浴衣の着用はNGです。これは日本でも海外でも同じです。) また、絹に近い化学繊維の“シルック”等が素材の着物も、カジュアル中級編としてお勧めです。光沢があるので綿やデニム素材よりクラスアップして見えますし、柄行きや色合いを選べば様々な場面で着用出来ます。化学繊維の着物は綿やデニムと同じく家庭で洗濯できるものが多く、これまた1枚あると何かと便利ではあります。 皆さんも是非、お花見や街歩き等に洋服感覚の“カジュアルキモノ”を取り入れ、楽しんでみて下さい。
写真:絹に近い化学繊維“シルック”製の着物。国際親善&伝統芸能イベント等で出番が多い一枚です。
CHANTOママライター/トヤマチエコ